日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
自然気胸に対する肺楔状切除時に発生した全身空気塞栓症の1例
幸 大輔川野 理深井 一郎
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2015 年 29 巻 6 号 p. 798-802

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抄録
重篤な全身空気塞栓症(SAE)が再発気胸に対するブラ切除を受けた他に既往歴の無い若年者に発症したので報告する.ブラは肺尖癒着の近傍にあり,これを完全に剥離したのち,ブラと癒着剥離部をともに自動縫合器で楔状切除した.術中バイタルサインは安定していたが,手術終了後,麻酔覚醒のため仰臥位に戻した直後にショックとなり,心臓超音波検査でSAEが引き起こした急性心筋虚血が原因と分かった.諸治療により,心筋虚血と後に判明した脳虚血による高次脳機能障害は術後21日間で回復した.肺尖癒着剥離時に肺組織が一部損傷し,末梢肺静脈と気道の交通が生じた可能性が示唆された.ブラの局在確認の目的で行った肺の再膨張が肺静脈系に空気を送り込む結果になったと考える.肺手術時に肺を再膨張させることは,しばしば行われるが,この行為は非常に稀ながらSAEを引き起こす可能性が有る.特に損傷肺では注意喚起が必要であることを呼吸器外科医と麻酔医は念頭に置くべきと考える.
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