抄録
症例は54歳男性,2012年1月,胸部不快にて当院内科を受診し胸部CT上血胸と診断され胸腔ドレーンを挿入,570 mlの血性排液を認めた.細胞診は陰性であった.血腫は増加傾向のため血腫除去術を施行,退院2週間後再発にて再度血腫除去術を施行した.術後の肺の拡張は不十分でCT上胸腔内に再び血腫が貯留しドレナージも不良で徐々に増大し圧迫症状が出現した.造影CT上造影効果が見られ腫瘍の可能性も否定できなかったがあまりの増大の早さにやはり血腫と診断し29日後3回目の血腫除去術を施行した.フィブリン塊と思われた部分を術中迅速病理診断に提出,小細胞肺癌と診断された.その後術後21日目に癌死となった.血胸で発症する原発性肺癌は0.1%未満とされ現在までの報告例は自験例を含めて5例でそのうち小細胞肺癌は自験例のみであった.本症例では1回目術中に悪性を疑えば術後に化学療法を行えた可能性があった.