2015 年 29 巻 7 号 p. 833-838
患者は80歳女性.左胸痛を主訴に来院した.38歳時に子宮筋腫に対して単純子宮全摘術が施行された.CTで左肺上葉に境界明瞭な腫瘤を認めた.経胸壁針生検を行い肺腺癌と診断し,左肺上葉切除術を施行した.組織学的に複雑に分枝する腺管が密に増生し,腺管の内腔に桑実胚(morule)が散在性に形成していた.形態および免疫染色所見は通常の肺腺癌と異なり,類内膜腺癌に類似した.paired-box gene 8(PAX8)陽性であり,全身精査で原発巣となり得る腫瘍性病変を認めなかったことから,子宮類内膜腺癌の肺転移が最も可能性が高いと考えた.自験例は検索した範囲で最晩期の肺転移例と考えられた.術後4年の現在再発なく生存中である.