症例は63歳男性.CTにて両側肺野の多発すりガラス結節(ground-glass nodule:GGN)を指摘され,その後経過観察されていた.約5年後のCTにてGGNの1部が増大傾向を認めたため,CT上変化を認めた3つのGGNが存在する左上葉切除術を施行した.最終病理診断はいずれのGGNも炎症所見のみであった.長期に渡り徐々に増大傾向のGGNは低悪性度の肺癌の可能性があり,縮小手術が選択されることも少なくない.しかし肺実質内部に存在,多発,といった状況下では診断や治療方針決定に難渋する.一方,今回の症例のように増大傾向を認めたり,画像上肺癌が疑われても病理にて悪性所見を認めない症例の報告もある.多発GGNに対してはこれらの可能性を考慮した上で,個別に対応する必要がある.また,増大傾向を示すGGN症例における非悪性疾患の頻度を全国レベルで明らかにする必要があると思われた.