抄録
症例は60代女性.持続する咳嗽を主訴に近医受診.胸部単純レントゲン写真にて左下肺野に異常陰影を認め精査となる.気管支鏡検査にて肺腺癌の診断で手術の方針となった.術前CTにて左上大静脈遺残(persistent left superior vena cava;PLSVC)および左腕頭静脈の欠損といった血管の走行異常を認めたため,循環器内科とも相談し,左上大静脈流入部が冠状静脈洞であることを確認し手術に臨んだ.PLSVCの走行は術前CTおよび3D angiographyと同一であった.また,上縦隔リンパ節郭清時には通常と視野が異なるため注意を要した.術前CTでPLSVCを認めた左下葉肺癌の手術例を経験したので若干の文献的考察を踏まえて報告する.