抄録
50歳代日本人女性.約30年間米国アリゾナ州に在住していた.帰国時の健診で胸部異常陰影を指摘され当院紹介となった.胸部CTにて右S8に9 mm大の辺縁整な結節を確認した.血液検査では有意な所見なく,診断的治療目的に胸腔鏡下右下葉部分切除を施行した.病理組織所見では,乾酪肉芽腫の壊死部に大型球形で透明感のある病原体が散在しており,米国在住歴・部位・被包乾酪巣であることより術後に慢性肺コクシジオイデス症と診断した.コクシジオイデス症は真菌の中では非常に感染力が強く,症状がなければ培養ならびに血清・血液学的検査での検出が困難である.そのため小型結節に対しては,詳細な渡航歴と画像所見から慢性肺コクシジオイデス症を疑い,二次感染予防に努めることが重要であると考えられた.