2016 年 30 巻 5 号 p. 598-602
症例は76歳,男性.偶発的に発見された1A期肺癌に対して右肺下葉切除術,リンパ節郭清を施行した.特に誤嚥の徴候はなかったが,術後6日目より肺炎をきたし,抗生剤加療を開始した.しかし難治性であったことから,耳鼻科診察を依頼したところ,嚥下障害が判明した.もともと幽門側胃切除術後の逆流性食道炎が既往にあり,術後にその症状も増悪していたことから,化学性の肺障害を合併して難治性となり,気道保護のために気管切開術を施行した.しかしカフ脇からの垂れ込みが続くため,肺炎の改善が見込めず,最終的に喉頭摘出術を施行してリハビリ病院へ転院となった.胃癌術後の逆流性食道炎は術後難治性肺炎のリスクファクターであると考えられた.