日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
肺癌術後に限局性気道浮腫をきたした一例
安部 美幸小副川 敦内匠 陽平橋本 崇史宮脇 美千代杉尾 賢二
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2016 年 30 巻 5 号 p. 608-614

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抄録
症例は80歳女性.健康診断にて胸部異常陰影を指摘された.原発性肺癌と診断され,右上葉切除術+リンパ節郭清2a-2群を施行した.術後4日目より喘鳴が出現し,CTにて中葉支の浮腫が指摘されステロイドと抗菌薬投与を開始した.術後6日目に更なる呼吸状態の悪化と,著明な気道浮腫による右主気管支の閉塞を認めたため,気管内挿管・人工呼吸管理とした.ステロイドと利尿剤にて気道浮腫は改善し,術後8日目に挿管チューブを抜管した.以後ステロイド,利尿剤の内服加療を行い症状の改善を得た.本症例は気管支喘息や間質性肺炎などの基礎疾患はなく,心不全も否定的であった.浮腫は右主気管支に著明で,リンパ節郭清に伴うリンパ浮腫と考えられた.高齢かつ低身長に,循環血漿量増加が加わったことが,症状出現を助長したと考えた.術後のリンパ浮腫は稀な合併症であり,発生時期や持続時間も様々であるが,適切な治療により改善する病態である.
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