2017 年 31 巻 4 号 p. 439-445
肝細胞癌(HCC)患者では,ウイルス肝炎治療の進歩により肝関連死亡は減少し,遠隔転移例増加が見込まれ,その治療戦略が重要になる.当科で肺切除を施行したHCC肺転移10例について,炎症の指標であるリンパ球好中球数比(NLR)とGlasgow Prognostic Score(GPS)が予後因子になりうるかと,肺切除後の予後を検討した.10例中7例に再々発を認め,6例が死亡した.多変量解析ではそれぞれNLR>2.31が肺切除後の再発に対して(P=0.043),転移数≧2個が死亡に対して(P=0.04)独立した危険因子であった.再発7例中3例はさらなる外科切除を施行し,他の4例より有意に生存期間が延長した(中央値98.6 vs 12.2ヵ月;P=0.01).HCC肺転移例において,NLR>2.31の症例は再発に注意が必要だが,再発例であっても,再切除可能ならば積極的に再切除する意義があると考えられた.