日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
同種造血幹細胞移植後5年で発症した上葉優位型肺線維症による難治性肺瘻の1例
西田 智喜住友 伸一石川 将史今村 直人峯浦 一貴
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2017 年 31 巻 6 号 p. 735-740

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抄録

症例は49歳,男性.5年前に当院血液内科で同種造血幹細胞移植を施行されている.移植後の経過は良好で慢性GVHD(graft-versus-host disease)もなく,画像検査は移植後1年目に施行されたのが最終であった.2ヵ月ほど前から労作時呼吸苦を自覚するようになり,右気胸を発症して当科紹介受診となった.こちらは胸腔ドレナージと胸膜癒着術のみで軽快したが,その3ヵ月後に左気胸も発症し,難治性肺瘻であったので手術を施行した.背景に上葉優位型の肺線維症が存在しており,造血幹細胞移植後晩期の非感染性呼吸器合併症の可能性が考えられた.近年,稀ではあるが造血幹細胞移植後に上葉優位型肺線維症を発症する報告が散見されるようになっているものの,慢性GVHDとの関連性は示されておらず,発症機序は明らかにされていない.今後も症例の蓄積が必要と思われるため,文献的考察を加えて報告する.

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