2017 年 31 巻 6 号 p. 741-746
症例は83歳男性.64年前に肺結核にて右胸膜外合成樹脂球充填術を受け,順調な経過を示していた.64年後発熱を主訴に来院した.胸部CT検査等にて膿胸腔の拡大を認め,G群溶血連鎖球菌による膿胸と診断し,合成樹脂球摘出術および開窓術を施行した.開窓術から22ヵ月後大網充填術による閉窓術を行った.術後,難治性の気管支瘻のためEWSによる気管支充填術を行い退院した.1年以上経過した現在,膿胸の再発なく自立生活している.合成樹脂球充填術は1940~1950年代虚脱療法として施行された時期があった.その合併症によりまもなく施行されなくなったが,長期経過して摘出術を余儀なくされたとの報告がある.本治療を受けた症例は,高齢化し,報告例は稀となった.本例は本邦で摘出術を行った最後の症例となる可能性があり,興味ある症例と考えられた.