日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
軽度APTT延長から術前に先天性血友病Aと診断した転移性肺腫瘍の1例
立松 勉齋藤 雄史千馬 謙亮山川 洋右
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2018 年 32 巻 1 号 p. 18-23

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抄録

症例は67歳,男性.4年前に他院にて直腸癌に対し低位前方切除術を施行された.9ヵ月前の胸部CTで右肺結節を2ヵ所指摘され,臨床的に肺転移と診断された.化学療法を施行したが肺結節の増大を認め当科紹介受診,手術目的で入院となった.胸部CTで右上葉S3に1.8 cm,中葉S5に3.0 cmの結節影を認めた.術前の血液検査でAPTT軽度延長を認め血液凝固因子を測定したところ,第VIII凝固因子の低下を認め,第VIII凝固因子インヒビターは検出されず先天性血友病Aと診断した.術直前から第VIII因子製剤の投与を開始して手術を施行,術式は胸腔鏡下右肺中葉+右S3区域切除術を予定したが,易出血性を認め右S3区域切除から右S3部分切除に変更し安全に手術しえた.術後も第VIII因子製剤の投与とAPTTモニタリングによって問題となる術後出血なく安全に管理できた.APTTの軽度延長が臨床的に問題となることは少ないが血友病である可能性も念頭におく必要がある.

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