日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
Print ISSN : 0919-0945
ISSN-L : 0919-0945
症例
胸膜肺全摘後に発生した難治性疼痛に対しメサドンが有効であった1例
中村 晃史多久和 輝尚橋本 昌樹近藤 展行棚田 大輔長谷川 誠紀
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 32 巻 1 号 p. 88-93

詳細
抄録

メサドンは本邦で2013年に使用が開始されたオピオイド鎮痛薬であり,他のオピオイド鎮痛薬でコントロール不能な癌性疼痛例に使用される.症例は49歳男性.悪性胸膜中皮腫に対し胸膜肺全摘術を施行後,難治性の疼痛(胸部~背部,創部周囲)が出現し,オキシコドン80 mg/日まで増量するも効果が不十分であった.メサドンを導入し30 mg/日へ増量,鎮痛補助薬を併用する事で疼痛は著明に軽減した.開胸術後の疼痛の要因として侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛が挙げられる.メサドンはμ受容体のみならず,NMDA受容体へ高い親和性を有し神経障害性疼痛に対しても有効である.術後疼痛に対しては現状では適応外使用であるが,開胸術後の難治性疼痛に対して有効な選択肢の一つとなる可能性があり,今後の前向き研究が待たれるところである.

著者関連情報
© 2018 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top