2018 年 32 巻 4 号 p. 482-486
症例は68歳男性.頭痛,嘔吐を主訴に近医を受診した.血液検査で低ナトリウム血症を認め,難治性であったため,精査目的に当院を紹介受診となった.精査にてSIADHの診断に至り,胸部CTで前縦隔に結節を認めたことから,前縦隔腫瘍に合併したSIADHと考えて拡大胸腺摘出術を行った.腫瘍は病理組織学的に胸腺から発生した神経芽腫であった.術前治療に難渋した低ナトリウム血症は,術後速やかに改善し,症状も消失した.縦隔腫瘍にSIADHを合併することは非常に珍しい.文献上,SIADHを合併した縦隔腫瘍はほとんどが悪性腫瘍であるため,このことに留意した根治性の高い術式選択が重要である.