日本呼吸器外科学会雑誌
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32 巻, 4 号
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巻頭言
原著
  • 安川 元章, 川口 剛史, 河合 紀和, 澤端 章好
    2018 年 32 巻 4 号 p. 432-441
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    肺癌病理病期I期の5年生存率は約80%で,完全切除できた症例でも再発する.今回,我々は病理病期I期非小細胞肺癌完全切除症例について予後検討を行い,再発予測因子を検討した.当院において肺葉切除以上と系統学的リンパ節郭清を行い,完全切除が施行できた原発性肺癌症例で,病期分類I期の非小細胞肺癌381例を対象とした.観察期間中央値は45ヵ月(1-89ヵ月)で,再発例は51例で,全症例の5年生存率は92.1%(95%信頼区間88.0-94.8%),5年無再発生存率は84.9%(95%信頼区間80.3-88.5%)であった.再発をエンドポイントとして検討した結果,単変量解析ではCT上の腫瘍浸潤径,病理学的腫瘍浸潤径,充実性腫瘍,組織型,組織学的グレード,PL因子,V因子,LY因子,術前CEA値が再発予測因子であったが,多変量解析では組織学的グレードのみが独立した再発予測因子であった.

  • 西 英行, 伊賀 徳周
    2018 年 32 巻 4 号 p. 442-449
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    目的・対象:1993年~2016年の期間に治療を行った悪性胸膜中皮腫177例を対象とした.結果:化学療法100例(56%),手術療法52例(29%),放射線療法単独3例(2%),Best supportive care 22例(13%)であった.術式は,胸膜肺全摘術43例で,胸膜切除/肺剥皮術6例であった.化学療法は,gemcitabineを含むレジメンが32例で,pemetrexed(Pem)が64例であった.生存期間中央値は,化学療法11.0ヵ月と手術療法29.0ヵ月で有意差を認めた.Pem使用の有無では,14.0ヵ月と9.0ヵ月で有意差を認めた.多変量解析では,PS≥2,非上皮型,臨床病期stage III+V,LMR<2.74,手術無し,が予後不良因子であった.結語:手術療法とPemを含む化学療法の有用性が認められた.

  • 高橋 伸政, 澤端 章好, 松谷 哲行, 川村 雅文, 大塚 崇, 堀尾 裕俊, 坂口 浩三, 金子 公一, 中山 光男, 吉谷 克雄, 千 ...
    2018 年 32 巻 4 号 p. 450-457
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    肺癌消極的縮小手術前向き研究(KLSG0801)症例を用いて腫瘍局在(TL)別の腫瘍径(TS)と断端距離(MD)の関係,MD/TSおよび切除断端細胞診(MC)と予後の関係を後ろ向きに検討した.TSとMDの関係はTLがLewis分類Easy(n=18)では正の相関を認めたがDifficult(n=14)では認めず,TSが大きくてもMDは十分確保されていなかった.3生率は,MD/TS>1(n=12)では100%,MD/TS≦1(n=20)では59.7%(p=0.06),MC(-)(n=18)では88.1%,MC(+)(n=5)では20%で,MC(+)は有意に予後不良であった(p=0.001).MC,MD/TSは予後規定因子となる可能性がある.MD/TS>1が重要であるが,Lewis分類DifficultではTS以上のMDの確保が困難である可能性がある.

症例
  • 門松 由佳, 川角 佑太, 上野 陽史, 宇佐 美範恭, 内山 美佳, 森 正一
    2018 年 32 巻 4 号 p. 458-463
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は60歳男性.繰り返す喀血を主訴に前医を受診した.重症肺炎の既往があり,左肺機能の低下を指摘されていた.胸部CTで左肺全体の囊胞状変化と容積低下,気管支拡張を認めた.複数の気管支動脈が高度に拡張し大動脈弓下と左肺門部を蛇行していた.標的血管が多く著明な拡張を伴っていたため気管支動脈塞栓術は不可能と判断し手術を施行した.手術は肺動静脈の処理を先行し,異常血管の集簇切離を行うことで時間を短縮し出血を最小限にとどめた.左肺全摘術後,広背筋弁にて気管支断端を被覆した.出血量は1,040 mLであった.術後経過は良好で以降は喀血を認めていない.気管支動脈蔓状血管腫の手術では異常血管の脆弱性と易出血性のため出血コントロールに苦慮する事がある.我々は,手術時の異常血管切離の手順と方法に工夫を加えることで高度に拡張した続発性気管支動脈蔓状血管腫の手術を比較的少ない出血量で手術を終えることができた.

  • 坂口 泰人, 千葉 直久, 齊藤 正男, 石川 真也, 中川 達雄
    2018 年 32 巻 4 号 p. 464-468
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    肺結節陰影を呈した肺スエヒロタケ(Schizophyllum commune)症の1切除例を経験したので報告する.症例は58歳,女性.職場健診にて右肺の異常陰影を指摘され,前医に紹介となり,CT検査で右肺上葉に空洞を伴う結節影を認め,精査加療目的で当科に紹介となった.PET検査では同結節に軽度の集積を認め,診断および治療を兼ねて胸腔鏡下手術を行った.術中迅速診断では悪性所見を認めず,肺部分切除を施行した.術後の気漏が遷延したこと,および,その後の検査で肺アスペルギルス症が疑われため,再手術にて右肺上葉S1+S2区域切除を行った.術後の培養検査からアスペルギルスとは同定されず,遺伝子検査の結果,肺スエヒロタケ症の診断に至った.術後経過は良好で術後5年の現在,肺スエヒロタケ症の再燃はみられない.

  • 関村 敦, 船﨑 愛可, 本野 望, 薄田 勝男, 浦本 秀隆, 吉松 隆
    2018 年 32 巻 4 号 p. 469-474
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は72歳女性.交通事故で前胸部をハンドルで強く打ち,救急車で当院へ搬送された.来院時,胸部X線写真で左血胸を認め胸腔ドレーンを留置し,胸部造影CTを実施した.明らかな造影剤の漏出は認めず中等度の血胸であった.入院後3時間後からショックバイタルを呈し,再度胸部単純X線写真を撮影したところ,左肺野の透過性は低下し,縦郭陰影は右側へと偏位を認め,血胸の増悪と考えられ緊急手術を行った.開胸後,胸腔内の血腫2000 gを除去したところ,血圧は回復した.出血源は肺尖部の壁側胸膜からの断裂した索状癒着の異常血管であり,同血管をクリッピングして止血した.他には出血部位は認められなかった.<まとめ>緊張性血胸を来した外傷性血胸の1例を経験した.外傷性の大量血胸においては,壁側胸膜からの索状癒着による異常血管の破綻はまれではあるものの,念頭に置いたうえで早急な止血術をおこなうべきである.

  • 坂口 泰人, 千葉 直久, 齊藤 正男, 石川 真也, 中川 達雄
    2018 年 32 巻 4 号 p. 475-481
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    肺癌に対する切除手術後に発症したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を経験したので報告する.症例は71歳,男性.19年前に左肺腺癌に対して,術前放射線治療後に左肺上葉切除及び胸壁合併切除を受けている.術後放射線治療を追加し,その後,再発は認めていなかったが,1ヵ月前より左前胸部の腫脹を自覚し再受診となった.胸部CTで第3肋骨の破壊像を伴う左前胸部軟部腫瘤を認めた.2回の経皮的生検でも確定診断には至らず,切除手術を行った.胸壁と腫瘍は一体となっており,第3-5肋骨を含む胸壁とともに腫瘍を切除した.病理検査ではびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断であり,左上葉切除後の遺残腔に接する胸壁から発生していることから膿胸関連リンパ腫(pyothorax-associated lymphoma)の類縁疾患であると考えられた.術後R-CHOP療法を6コース施行し,他病死までの3年間の寛解状態を維持した.

  • 椙村 彩, 松原 寛知, 内田 嚴, 松岡 弘泰, 市原 智史, 中島 博之
    2018 年 32 巻 4 号 p. 482-486
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は68歳男性.頭痛,嘔吐を主訴に近医を受診した.血液検査で低ナトリウム血症を認め,難治性であったため,精査目的に当院を紹介受診となった.精査にてSIADHの診断に至り,胸部CTで前縦隔に結節を認めたことから,前縦隔腫瘍に合併したSIADHと考えて拡大胸腺摘出術を行った.腫瘍は病理組織学的に胸腺から発生した神経芽腫であった.術前治療に難渋した低ナトリウム血症は,術後速やかに改善し,症状も消失した.縦隔腫瘍にSIADHを合併することは非常に珍しい.文献上,SIADHを合併した縦隔腫瘍はほとんどが悪性腫瘍であるため,このことに留意した根治性の高い術式選択が重要である.

  • 吉田 将和, 深澤 拓也, 湯川 拓郎, 森田 一郎, 物部 泰昌, 猶本 良夫
    2018 年 32 巻 4 号 p. 487-491
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,女性.近医で胸部異常陰影と低酸素血症を指摘され当院呼吸器内科紹介となった.胸部造影CTでは左舌区に複雑型肺動静脈瘻を認め,縦隔型舌区肺動脈より1本,葉間から分岐するA4,A5,A8よりそれぞれ1本ずつ流入動脈を認めた.放射線科よりコイル塞栓術は困難と判断され,手術目的に当科紹介となった.手術は左上葉切除を施行した.術前検査でシャント率31.4%,動脈血酸素分50.2 mmHgであったが,術後には9.5%,動脈血酸素分圧も89.7 mmHgと著明に改善した.複雑型肺動静脈瘻に対して手術が有効であった一例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

  • 北原 哲彦, 清水 勇希, 後藤 達哉, 佐藤 征二郎, 小池 輝元, 土田 正則
    2018 年 32 巻 4 号 p. 492-499
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は64歳女性.子宮体癌の破裂により当院を受診した.緊急で子宮切除が行われたが,その際のCTで深部静脈血栓と右肺動脈血栓,左肺動脈内の塞栓子を認めた.子宮体癌術後下大静脈フィルターと抗凝固薬にて治療が行われた.抗凝固療法により右肺動脈内の血栓は消失したが,左肺動脈の塞栓子は消失しなかった.その後塞栓子は徐々に増大を認めた.PET/CTでは同病変に集積を認め,心臓カテーテル検査での腫瘍生検により血管肉腫と診断された.胸骨正中切開で体外循環を併用し,左主肺動脈切除と左肺全摘,右主肺動脈再建を行った.病理では血管内膜由来の肉腫であることが判明した.術後8ヵ月目に再発を認め,9ヵ月後に肺炎による呼吸不全で死亡した.肺動脈肉腫は稀な疾患であり,文献的考察を加え報告する.

  • 岩田 輝男, 門司 祥子, 小野 憲司, 花桐 武志, 田中 文啓
    2018 年 32 巻 4 号 p. 500-503
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は66歳の男性.縦隔リンパ節腫大を認め当院を受診された.EBUS-TBNAにてcarcinomaの診断が得られたが,全身精査にて原発巣を認めず,原発不明右下部傍気管リンパ節癌の診断で手術を施行した.胸腔鏡下右上縦隔リンパ節郭清術を行い,術中迅速病理検査で低分化癌の診断を得た.最終病理結果は小細胞癌であり,術後に同時化学放射線治療を行った.術後2年経過し原発癌の顕性化もなく無再発生存中である.原発不明縦隔小細胞癌の報告は極めて稀であるが,外科的切除を含めた積極的な集学的治療が望ましいと考えられた.

  • 矢口 綾子, 稲田 一雄, 山下 眞一, 岩﨑 昭憲
    2018 年 32 巻 4 号 p. 504-511
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    49歳男性.胸部異常陰影を指摘され,胸部造影CTで頚部から中縦隔にかけて3.5×3.5×9.5 cmの境界明瞭な囊胞様涙滴状腫瘤影を認め,内部に一部造影効果のある充実成分がみられた.MRIではT2強調で高信号,内部に低信号と高信号の混在する構造物を認めた.診断および治療目的に手術を施行した.術中所見より右迷走神経由来の神経鞘腫と判断したため,頚部アプローチのみで頚胸境界部を超え縦隔操作を行い被膜間摘出を行った.病理学的診断は迷走神経鞘腫瘍であった.術直後一過性の軽度嗄声は出現したが,術後1ヵ月目の外来では改善しており,反回神経麻痺・Horner症候群等の合併症や再発なく経過している.頚部上中縦隔に発生した迷走神経鞘種に対して頚部アプローチでの被膜間摘出術は合併症やQOL低下を回避しうるアプローチ法の1つと考えられる.

  • 正村 裕紀, 数井 啓蔵, 敦賀 陽介, 藤居 勇貴, 坂本 聡大
    2018 年 32 巻 4 号 p. 512-516
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    肺癌肉腫は組織学的に癌腫と肉腫との混在からなる肺悪性腫瘍であり発生頻度は比較的稀で,重喫煙者の高齢男性に多い.一般に進行が早く予後不良であり標準治療が確立されていない.

    症例は68歳,男性.咳嗽,喀痰を主訴に当院を受診.胸部レントゲンで左中肺野に結節影を認め精査を行った.胸部CTでは左S3に胸膜浸潤を伴う30 mmの結節影を認め,FDG-PETにて同部位にSUV max10.2の集積を認めた.気管支鏡下生検で扁平上皮癌疑いの結果であったため左上葉肺癌の術前診断で胸腔鏡下左肺上葉切除および縦隔リンパ節郭清を施行した.病理所見は腺癌,扁平上皮癌と軟骨肉腫よりなる癌肉腫で#5と#11リンパ節に扁平上皮癌と肉腫の転移を認めた.術後補助化学療法は行わず経過観察していたが術後2ヵ月で左大腿,下腿部痛が出現し,MRIで骨転移(L5,S1)を認め,放射線照射を施行した.術後5ヵ月で胸腹部CTにて両肺多発肺内転移,肝転移を認め化学療法を行ったが術後13ヵ月で原病死した.

  • 吉田 久美子, 上田 和弘, 村上 順一, 田中 俊樹, 岡部 和倫, 濱野 公一
    2018 年 32 巻 4 号 p. 517-522
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】肺低形成は新生児期における呼吸障害の原因となり得るが,肺葉に限局した低形成の場合,成人期に指摘され,悪性腫瘍を合併することがある.【症例】我々はこれまで4例の肺癌合併中葉低形成を経験した.男性3例,女性1例で,年齢はすべて60歳代であった.平均中葉容積率は全肺の0.24%と著明に縮小していた.肺癌組織型は,4例中3例が定型的カルチノイド,1例が小細胞肺癌であった.4例とも右中葉切除術を施行した.【考察】肺低形成の多くは,先天性臓器異常に続発する二次性であるが,今回の4例は合併異常を有さず,病変も中葉に限局していた.このため呼吸障害を発症することなく成人期まで経過したと考えられた.全例,神経内分泌腫瘍であったが,肺低形成と神経内分泌腫瘍との因果関係は不明である.【結語】右中葉低形成に肺癌を発症した4例を経験した.

  • 吉峯 宗大, 瀬山 厚司, 村上 雅憲, 林 雅規, 井上 隆, 守田 知明
    2018 年 32 巻 4 号 p. 523-528
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    扁平上皮癌と小細胞癌からなる肺衝突癌の1例を経験したので報告する.症例は72歳,男性.全身倦怠感を主訴に当院を受診し,CT検査で右肺下葉に腫瘍性病変を指摘された.2つの腫瘍が雪ダルマ状に融合した形態で,全体の大きさは41×35 mmであった.胸水貯留や有意なリンパ節腫大は認められなかった.腫瘍尾側部に対するCTガイド下生検で扁平上皮癌と診断され,胸腔鏡補助下右肺下葉切除術が施行された.術後の病理組織検査では,扁平上皮癌と小細胞癌からなる肺衝突癌と診断された.肺衝突癌は術前診断が困難であるが,雪ダルマ状の腫瘤では肺衝突癌の可能性を考慮する必要がある.

  • 小林 健一, 森 將鷹, 芦刈 周平, 岩田 輝男, 安田 学, 花桐 武志
    2018 年 32 巻 4 号 p. 529-532
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は56歳,男性.糖尿病治療前の胸部CTにて前縦隔に境界が比較的明瞭な約2 cmの結節を認めた.MRIにてT1・T2強調像共に筋肉と等信号を示した.胸腺腫や気管支原生囊胞,リンパ管腫を疑い,診断・治療目的に胸腔鏡下縦隔腫瘍摘出術を施行した.術中所見では左腕頭静脈腹側の胸腺内に約2 cm大の腫瘤を認めた.最終病理診断では,コレステリン結晶,炎症細胞,異物巨細胞を認め,コレステリン肉芽腫と診断された.前縦隔に発生したコレステリン肉芽腫は極めて稀である.

  • 坂口 泰人, 千葉 直久, 齊藤 正男, 張 性洙, 石川 真也, 中川 達雄
    2018 年 32 巻 4 号 p. 533-539
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    上大静脈に浸潤する縦隔腫瘍を手術する場合,人工血管置換などの血行再建を必要とすることがある.今回,上大静脈に浸潤する縦隔腫瘍に対して一過性内シャントをおくことで切除し得た症例を経験したので報告する.症例は46歳の男性.胸部造影CTにて左腕頭静脈の上大静脈流入部に浸潤する縦隔腫瘍を認め当院に紹介となる.経皮的生検を行うも診断に至らず手術を施行した.胸骨正中アプローチ下,右心耳から側孔をあけた24 Fr静脈脱血用カニューレを挿入し,先端が浸潤部を超えるように内シャントを設置し上大静脈の血流を確保した.上大静脈への浸潤部とともに縦隔腫瘍を一塊として切除し,心膜パッチによって欠損部を閉鎖した.最終病理診断はSeminomaであった.本術式に対して考察を加える.

  • 佐伯 祐典, 佐藤 幸夫, 荒木 健太郎, 北沢 伸祐, 小林 尚寛, 神山 幸一
    2018 年 32 巻 4 号 p. 540-543
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    69歳男性.65歳時に前医消化器外科にて横行結腸癌に対して横行結腸切除術を施行.術後3年のCTで気管下部膜様部に造影効果の強い結節影を認め,前医呼吸器外科へ紹介.気管支鏡を施行されたが出血のリスクを考慮し生検せず経過観察の方針となった.1年後の術後4年のCTで増大傾向を認め,精査加療目的に当科へ紹介.全身麻酔下に気管支鏡下に生検を行った.腫瘍は易出血性で,生検結果はglomus腫瘍であった.本症例に対し気管管状切除術を施行,術中迅速診断で断端陰性を確認した.術後経過は良好で患者は術後1年半無再発生存中である.気管・気管支発生のglomus腫瘍は稀である.易出血性のため生検時は注意が必要である.良悪性の鑑別,壁外進展の有無を検討した上で,治療方針を決定すべきである.

  • 小林 良司, 橋本 崇史, 内匠 陽平, 小副川 敦, 宮脇 美千代, 杉尾 賢二
    2018 年 32 巻 4 号 p. 544-549
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    症例1は28歳女性.約4年前に後腹膜平滑筋肉腫に対し腫瘍摘出術を施行された.その際,腫瘍の下大静脈浸潤を認めたため合併切除が行われた.以後肺転移病変に対し切除および経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)が施行された.今回右下葉肺動脈内に異常陰影を指摘され右下葉切除術が行われ,右A9+10内に肉眼的腫瘍塞栓を認めた.症例2は74歳男性.3年前から肝細胞癌に対し,肝動脈化学塞栓療法(TACE),RFAが施行されていた.5ヵ月前にS6肝転移に対し肝拡大後区域切除術が施行され,右肝静脈内に腫瘍浸潤を認めた.術後3ヵ月目に右下葉肺動脈の血栓塞栓症が疑われ抗凝固療法が開始されたが,次第に増大したため,右下葉切除が行われた.右A9+10内に肉眼的腫瘍塞栓と末梢の肺梗塞病変を認めた.肺動脈の肉眼的腫瘍塞栓は大静脈系からの腫瘍の直接浸潤が発生に関わっていると考えられる.画像上は肺動脈血栓塞栓症との鑑別が重要である.

  • 亀田 洋平, 荒井 宏雅, 椎野 王久, 田尻 道彦, 奥寺 康司, 益田 宗孝
    2018 年 32 巻 4 号 p. 550-554
    発行日: 2018/05/15
    公開日: 2018/05/15
    ジャーナル フリー

    症例1は60歳男性,症例2は73歳男性,いずれも健康診断で胸部異常陰影を指摘され当院受診し,胸部CTの所見から間質性肺炎と診断された.病型の確定診断のため肺生検(胸腔鏡下肺部分切除術)を施行した.それぞれ,胸腔ドレーンを抜去した翌日,9日後に皮下気腫が出現した.2例とも画像上,術側肺の虚脱はないが,皮下気腫と縦隔気腫を認めた.胸腔内にドレーンを留置するスペースがないため,ドレナージは行わず経過観察を行い数日で気腫は改善した.

    この病態は,自動縫合器を用いた肺切除部の臓側胸膜下で肺胞破壊が生じ,漏出したairが肺門部を経て縦隔から,皮下気腫に至ったものと推測された.間質性肺炎の合併症の1つに続発性縦隔気腫が報告されているが,肺虚脱を伴わない皮下・縦隔気腫は間質性肺炎の肺生検時の術後合併症の1つと考えられた.

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