2018 年 32 巻 5 号 p. 647-653
症例は55歳男性.左肩の疼痛を契機に発見された左肺尖部浸潤肺腺癌.胸部CTにて第1肋骨,第1胸椎体,鎖骨下動脈への浸潤を認めた.術前に化学療法としてweekly CBDCA(AUC2)+weekly PTX(40 mg/m2)5コースと放射線治療50 Gyを施行したところ,腫瘍の縮小を認め,手術治療を計画した.手術は鎖骨下動脈の血管処理を行う可能性のある症例でありTransmanubrial approach(TMA)を選択し,同視野のまま第1胸椎体を露出させ,整形外科医により椎体の切除と椎体の前方固定を行った.次に腹臥位にて椎弓切除,脊椎後方固定を行い,最後に右側臥位前側方開胸にて左上葉切除を行い完全切除し得た.椎体合併切除を必要とする肺尖部浸潤癌ではTMAを用いることで前方の血管剥離と椎体操作の視野展開に有用である.