2018 年 32 巻 5 号 p. 659-666
症例は37歳女性.健康診断で胸部異常陰影を指摘され当院受診となった.胸部CT,MRIで前縦隔に卵殻様の辺縁石灰化と一部充実成分を伴う3.8×2.4 cmの囊胞性腫瘤を認めた.FDG-PETで腫瘤にSUVmax2.65の軽度集積を認めた.陳旧性炎症性変化や石灰化を伴う胸腺囊胞性病変が疑われ,診断・治療目的に胸腔鏡下縦隔腫瘍摘出術を施行した.前縦隔に境界明瞭な腫瘍を認め,周囲組織への浸潤はなく,腫瘍を摘出し,病理組織検査で胸腺原発の粘表皮癌と診断した(正岡分類I期).粘表皮癌は唾液腺,気管支に好発することが知られるが,胸腺原発例は極めて稀で,胸腺癌の4.6%と言われる.石灰化を伴う症例はさらに稀で,今回我々は腫瘍辺縁に卵殻様の石灰化を伴う胸腺原発粘表皮癌を経験したので報告する.