2019 年 33 巻 2 号 p. 102-106
術後肩関節痛を訴える症例について後方視的に検討した.対象は2017年1月1日より11月30日まで,側臥位で呼吸器手術を行った205例.未成年,再手術症例は除外した.年齢の中央値は71歳.男性136人,女性69人.60例を完全鏡視下,145例を小開胸で行った.肺葉切除以上が112例,以下が93例.完全鏡視下では患側上肢は挙上せず内転,小開胸では挙上外転した体位を取った.肩関節痛は39例で見られた.肩関節痛があった群はなかった群に比し,年齢,性別,手術時間,出血量で差がなかったが,完全鏡視下手術で有意に少なく,肺葉切除以上で有意に多かった.多変量解析では完全鏡視下手術のみが独立した因子であった.完全鏡視下手術では患側上肢は健側に沿わせ内転内旋させる.完全鏡視下手術例では60例中1例のみ軽い肩関節痛を訴えたのみであった.患側上肢を内転内旋する体位が術後肩関節痛の予防に有用であると考えられた.