日本呼吸器外科学会雑誌
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33 巻, 2 号
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巻頭言
原著
  • 平井 慶充, 房本 安矢, 平井 一成, 矢田 由美, 大橋 拓矢, 川後 光正, 西村 好晴
    2019 年 33 巻 2 号 p. 102-106
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    術後肩関節痛を訴える症例について後方視的に検討した.対象は2017年1月1日より11月30日まで,側臥位で呼吸器手術を行った205例.未成年,再手術症例は除外した.年齢の中央値は71歳.男性136人,女性69人.60例を完全鏡視下,145例を小開胸で行った.肺葉切除以上が112例,以下が93例.完全鏡視下では患側上肢は挙上せず内転,小開胸では挙上外転した体位を取った.肩関節痛は39例で見られた.肩関節痛があった群はなかった群に比し,年齢,性別,手術時間,出血量で差がなかったが,完全鏡視下手術で有意に少なく,肺葉切除以上で有意に多かった.多変量解析では完全鏡視下手術のみが独立した因子であった.完全鏡視下手術では患側上肢は健側に沿わせ内転内旋させる.完全鏡視下手術例では60例中1例のみ軽い肩関節痛を訴えたのみであった.患側上肢を内転内旋する体位が術後肩関節痛の予防に有用であると考えられた.

  • 古泉 貴久, 岡田 英, 廣野 達彦, 渡辺 健寛
    2019 年 33 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院では保存的治療で改善しない急性膿胸・肺炎随伴性胸水に対して積極的に線維素溶解療法を行う方針としている.線維素溶解療法の有効性と安全性を検討した.【対象と方法】対象は2012年1月から2017年2月までに当科で急性膿胸・肺炎随伴性胸水に対して線維素溶解療法を行った症例とした.胸腔ドレナージで十分な改善が得られない症例にウロキナーゼ6~12万単位を生理食塩水100 mlに溶解し胸腔内に注入,3~6時間クランプ後,開放し持続吸引を行った.排液が得られる間は連日施行した.【結果】対象症例は70例,男:女=61:9,平均年齢は65.7歳.70例中65例(92.9%)は線維素溶解療法で改善し退院した.ウロキナーゼ投与における出血などの重篤な有害事象は認めなかった.5例は改善せず手術治療を行い改善した.【結語】線維素溶解療法は有効で,簡便かつ合併症も認めず治療の選択肢のひとつと考えられる.

  • 本間 崇浩, 北村 直也, 尾嶋 紀洋, 明元 佑司, 飛弾 結樹, 芳村 直樹
    2019 年 33 巻 2 号 p. 113-121
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    【目的】ロボット支援手術の初期経験から完全胸腔鏡下手術との違いを考察し,ロボット支援手術の問題点を報告すること.

    【対象と方法】2018年1月~9月まで当科のロボット支援手術で発生した問題点を見直し,周知されている問題点と予期しなかった問題点に分けて検討した.

    【結果】対象は6例.肺癌,縦隔腫瘍各3例に施行.従来の完全胸腔鏡下手術では経験しない問題が6つ発生し,このうち周知の問題が5つ,予期しなかった問題は1つであった.周知の問題4つを含む5つの問題が,現状のダヴィンチでは予防困難,もしくは経験以外に克服法を明示されていなかった.

    【結語】ロボット支援手術は従来手術とは多くの違いとピットフォールが存在する.安全な導入にはダヴィンチの特性と適応を把握し,多職種チームによるシミュレーションを繰り返すこと,そして施設間の情報共有が必要と考えられた.

症例
  • 岡本 圭伍, 林 一喜, 賀来 良輔, 川口 庸, 大塩 恭彦, 花岡 淳
    2019 年 33 巻 2 号 p. 122-126
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    呼吸器外科の対象患者は多岐にわたり,とりわけ精神疾患併存例では,手術適応の決定や周術期管理に難渋し,術後経過も一様ではない.2012年1月から2017年12月までに継続治療を要する精神疾患を有する16例を対象とし,術後経過について後方視的に検討した.年齢は68(40-84)歳,男/女性が9/7例,肺悪性腫瘍/縦隔腫瘍/肺良性腫瘍が11/3/2例,精神疾患の内訳は統合失調症/気分不安障害/認知症が4/10/2例であった.入院経過として術後平均2.8日にドレーン抜去,術後平均8日に退院し,重篤な合併症の発現はなかった.精神疾患の悪化は8例に認め,全例で術後2ヵ月以内の増悪であり,手術による悪性診断が有意な増悪因子であった.疾患群別には,統合失調症群では術後16(2-36)日と比較的早期に悪化し,気分不安障害群では術後39(14-61)日と,退院後晩期にかけての悪化が目立った.

  • 田畑 佑希子, 久保田 玲子, 阿部 大, 加藤 弘明, 成田 吉明
    2019 年 33 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    61歳男性.胸部CTで気管背側に接する腫瘍を認め,経食道的に生検を行い腺様囊胞癌と診断.転移は認めず手術を行った.左側臥位,右後側方切開にて有茎広背筋弁を採取し,第4肋間で開胸.気管膜様部に限局する6×4 cmの腫瘍で,10気管輪に及ぶため端端吻合での再建は困難であり,気管管状切除は断念した.腫瘍基部の辺縁で気管膜様部のみを切除し,欠損部は広背筋弁を縫着し再建した.術直後に喉頭浮腫を認めたが,重大な合併症なく経過良好だった.顕微鏡的遺残腫瘍を認めたが,術後放射線療法を行い,3年6ヵ月の無再発生存が得られている.

    腺様囊胞癌は広範囲進展のため完全切除が困難なことも多いが,発育が緩徐で放射線感受性も高いため,術後放射線療法による局所制御が期待できる.完全切除が困難な症例では,肉眼的遺残腫瘍のない最小限の切除範囲とし,術後放射線療法により遺残腫瘍を制御する治療戦略が安全かつ有用な可能性がある.

  • 小林 健一, 大﨑 敏弘, 福市 有希子, 安田 学, 宗 知子, 小舘 満太郎
    2019 年 33 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    大量血胸を契機に発見される孤立性線維性腫瘍の報告例は少ない.症例は35歳,男性.突然の左胸痛を主訴に近医を受診した.左胸水貯留を指摘され,当院に紹介となった.胸部CTで大量の左胸水と左胸腔内背側,横隔膜上に7.4×4.5×6.2 cm大の腫瘤を認めた.胸腔穿刺にて血性胸水と判明した.超音波検査にて腫瘤は血流が豊富であり,生検による診断は困難であった.貧血が進行したことから,腫瘍からの持続的な出血が疑われ,診断・治療(止血)目的に手術を施行した.腫瘍は胸壁と横隔膜への浸潤が疑われたため合併切除を行った.切除標本で腫瘍の一部が隆起し被膜欠損部を認めたことから腫瘍増大に伴う腫瘍自体の破綻が血胸の原因と考えた.最終病理診断では,紡錘形細胞が錯綜に増生し,免疫組織化学上CD34(+),Vimentin(+),EMA(-),S-100(-)であり,遺伝子解析にてNAB2 exon6-STAT6 exon16/17融合遺伝子が検出され,孤立性線維性腫瘍と診断された.

  • 德永 拓也, 青木 雅也, 上村 豪, 大塚 綱志, 狩集 弘太, 佐藤 雅美
    2019 年 33 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    外科手術の麻酔管理において胃管留置の機会は多い.今回,気管支と共に誤挿入胃管を切断した症例を経験したので報告する.

    症例は67歳男性で,右下葉肺癌に対し右下葉切除術とリンパ節郭清を施行した.右下葉気管支は電動ステープラーで切断した.

    切除肺のホルマリン固定時に気管支断端にチューブを認めた.手術ビデオを検討し,気管支断端に胃管を確認し得た.胃管は麻酔科医により術中に抜去されており,術後断端瘻必発と判断し再手術を行った.気管支断端のステープルは部分的に外れており,縫合閉鎖と肋間筋被覆を行った.術後は気瘻を認めなかった.

    電動ステープラー使用時は明らかな異常はなく,気管支,胃管チューブといった厚い組織でも違和感なく切断できた.従来の手縫いや手動ステープラーによる操作では,違和感や断端の直視によりその異常を認知し得えた可能性が高い.電動ステープラー使用時には十分に注意を払う必要がある.

  • 宮本 英明, 佐藤 泰之, 磯和 理貴
    2019 年 33 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    67歳男性.他院で胸腹部大動脈瘤術後に横行結腸左側からS状結腸にかけて壊死となり,左半結腸切除術及び横行結腸ストマ造設を施行された.後腹膜膿瘍を生じ,ドレナージ加療にて一旦軽快したが再燃し,左胸腔内に穿破し膿胸となり当科に紹介された.開窓術後,横隔膜の瘻孔が自然に閉鎖し,その後に局所陰圧閉鎖療法を実施した.残存膿胸腔のうち,肋骨横隔膜角腹側の腔は肉芽形成により閉鎖され,植皮術のみで創を被覆することが出来た.完全上皮化後2年10ヵ月に他病死されたが,感染の再増悪は認めなかった.

  • 川名 伸一, 三竿 貴彦, 松原 慧, 吉川 武志, 青江 基
    2019 年 33 巻 2 号 p. 150-155
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    肺切除術中の偶発症の一つとして,稀ではあるが迷走神経刺激による心停止が起こることがある.症例は69歳,女性.左上葉肺腺癌に対して完全胸腔鏡下にて左肺上葉切除および縦隔リンパ節郭清術を予定して手術を開始した.肺門前方での左主肺動脈の剥離操作中に突然高度の徐脈から心静止となった.直ちにツッペルと示指を用いて心臓を叩打したところ,心静止後約1分で自己心拍は再開した.迷走神経刺激が原因と考えアトロピンを投与して手術を続行した.大動脈弓下リンパ節郭清の際に再び高度徐脈となったが,操作の中断により徐脈は改善した.その後,徐脈誘発に注意しつつ郭清を完遂し手術を終了した.肺切除術中の迷走神経刺激による心停止例の誌上報告は,本症例を含めていずれも左側手術であった.肺切除術,特に左側手術においては徐脈の出現に注意を払い,心停止の前兆として捉えて機敏に対応することが,心停止への移行を回避するために重要である.

  • 船崎 愛可, 岩井 俊, 本野 望, 関村 敦, 薄田 勝男, 浦本 秀隆
    2019 年 33 巻 2 号 p. 156-160
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    悪性リンパ腫と鑑別を要した多房性胸腺囊胞を経験した.症例は40歳代,男性.左副腎腫瘍・睡眠時無呼吸症候群・気管支喘息の経過観察中にCT上多発する前縦隔腫瘍を認めた.腫瘍マーカーや自己抗体は陰性,FDG-PETでは腫瘤にSUVmax3~4の軽度の集積,MRI検査ではT2強調画像で内部が高信号の多房性腫瘍を認めた.腫瘍は巨大であるため悪性リンパ腫も疑い,全身麻酔下切除生検を行った.高度肥満により分離肺換気による胸腔鏡下生検は不可能と判断し,両肺換気,仰臥位で小開胸下縦隔腫瘍生検を行い,迅速病理検査で胸腺囊胞と診断されたため手術を終了した.囊胞壁とそれに連続する胸腺組織が見られ,リンパ濾胞の過形成が認められた.表層は扁平上皮で覆われていた.また,コレステリン結晶の析出や異形巨細胞の出現,肉芽組織の増生や,壁の硝子化,線維性の肥厚,リンパ節,形質細胞浸潤を認め多房性胸腺囊胞と診断した.術後経過は良好で,現時点で腫瘍の増大や悪性腫瘍・自己免疫疾患の合併は認めていない.

  • 松本 学, 清水 奈保子, 田中 雄悟, 光井 卓, 宮本 良文, 眞庭 謙昌
    2019 年 33 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は45歳女性.8年前に子宮筋腫を指摘されていたが受診を中断していた.血痰を認め近医を受診したところ胸部CTにて右肺上葉に6 cm大の腫瘤影を認め精査目的に当院に紹介された.精査の結果,原発性肺癌(cT3N0M0 Stage IIB)が疑われ診断と治療目的に手術を施行した.術後病理組織学検査にて切除病変に肉腫成分を認めたが,確定診断に至らなかった.子宮筋腫が巨大であり子宮肉腫への悪性化による肺転移が否定できなかったため,子宮腫瘍の切除を施行したが病理診断は子宮筋腫であり,肺病変との関連がないことが確認された.肺病変についてさらに検討を行ったところβ-catenin染色が核と細胞質優位に染色されており,肺芽腫(pT3N0M0 Stage IIB)と診断された.巨大な子宮腫瘍性病変を有し,診断に苦慮した肺芽腫の1例を経験したので報告する.

  • 深井 隆太, 西田 智喜, 杉本 栄康, 築山 俊毅, 工藤 まどか, 渡部 和巨
    2019 年 33 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    肺アスペルギルス症に対する肺全摘は,膿胸や気管支瘻の頻度が高い術式である.症例は46歳,女性.肺結核後の喀血を伴う右肺全体に及ぶアスペルギルス症で受診,体力低下のため,術前2ヵ月外来でリハビリテーションを施行後,術前日に肋間動脈に血管塞栓術を行い,右肺全摘と広背筋弁による気管支断端被覆を施行した.術後合併症なく,第15病日に独歩退院となり,現在術後3年10ヵ月で外来通院中である.気管支断端被覆を行い,慎重な周術期管理を行うことで,術後合併症のリスクが高い肺アスペルギルス症右肺全摘症例において良好な経過が得られた.広背筋による気管支断端被覆は,断端瘻の予防に有用と思われた.

  • 浅野 久敏, 野田 祐基, 加藤 大喜, 森 彰平, 松平 秀樹, 大塚 崇
    2019 年 33 巻 2 号 p. 172-176
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は40代女性.健診で胸部異常陰影を指摘され,精査加療目的で当科紹介受診となった.胸部造影CTで第3胸椎の左側に2 cmの囊胞性病変を指摘された.椎間孔や硬膜囊との連続性は認めず,診断および治療目的で胸腔鏡下囊胞摘出術を行った.術中所見は弾性軟の境界明瞭で薄い被膜で覆われていた囊胞を認めた.また周囲臓器との癒着は疎であった.病理所見は単房性の囊胞で,線毛を有する円柱状および立方上皮で内腔は被覆されており,免疫染色ではエストロゲンおよびプロゲステロンレセプターがともに陽性であり,ミュラー管囊胞と診断した.

  • 河本 宏昭, 土田 真史, 手登根 勇人, 具志堅 益一, 西島 功, 松本 裕文
    2019 年 33 巻 2 号 p. 177-182
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は35歳男性.突然発症の右前胸部痛を主訴に来院した.放射線検査では胸腺囊胞内の出血と考えられたが,縦隔内の出血はわずかで胸腔内穿破はなくバイタルサインは安定しており,胸痛はすぐに消失したため緊急手術は行わず経過観察とした.しかし数ヵ月で囊胞は増大傾向を認め,また腫瘍合併を否定できないため発症後6ヵ月後に胸骨正中切開にて胸腺全摘術を行った.腫瘤周囲は癒着が高度で右縦隔胸膜は合併切除を要した.病理学的検索では腫瘍性病変は認めず,出血を伴った胸腺囊胞であった.成人における胸腺囊胞は経過観察の対象となることが多いが,本症のように出血やそれに伴う炎症を合併する場合や,腫瘍の合併が鑑別に挙がる症例では積極的な手術が必要と思われる.

  • 洪 雄貴, 田中 宏和, 山﨑 順久, 渡辺 裕介, 中出 雅治
    2019 年 33 巻 2 号 p. 183-186
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は55歳,男性.右肺上葉肺腺癌の診断で胸腔鏡下右肺上葉切除術及びリンパ節郭清(2a-1)を施行された.術後7日目に経過良好で退院となったが,術後10日目に心窩部痛,労作時呼吸苦を主訴に近医に救急搬送され心タンポナーデと診断された.緊急で心囊ドレナージを施行されたが,その後も排液が続いており精査加療目的に術後17日目に当院へ再入院となった.精査の結果リンパ液貯留による心囊液貯留と診断し,術後35日目にドレナージ目的に胸腔鏡下心囊切開術を施行した.再手術後は心囊液が貯留することはなく,再手術後13日目に独歩退院となった.肺癌術後の心タンポナーデは非常にまれであるが,重要な合併症の1つである.リンパ液が貯留することは非常にまれであり,その治療法として胸腔鏡下の心囊切開術は有用であると考えられた.

  • 渡辺 勇, 服部 有俊, 平山 俊希, 高持 一矢, 王 志明, 鈴木 健司
    2019 年 33 巻 2 号 p. 187-193
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    48歳男性.咳嗽・胸痛・嚥下困難を認め,胸部CTで右S2の4 cmの腫瘤は右下部気管傍リンパ節(#4R)及び気管分岐下リンパ節(#7)と一塊となり,食道浸潤が疑われた.右肺扁平上皮癌(c-T4N2M0 stage IIIB)に対し,根治的化学放射線療法(66 Gy)が開始されるも,26 Gy照射中に発熱し気管食道瘻を認めた.当科へ紹介となり気管管状切除を伴う右肺全摘除及び食道合併切除,頸部食道瘻造設,腸瘻造設を施行した.術後両側反回神経麻痺を認めたが全身状態は改善し,27病日に軽快退院となる.術後3ヵ月で2期的に胸骨後経路胃挙上術を施行した.リハビリテーションにより両側反回神経麻痺は改善し経口摂取も可能となり初回術後より8ヵ月が経過した.根治的化学放射線療法施行中の気管食道瘻は難治性の重篤な合併症であるが,病巣の進展範囲により外科的介入は救済治療戦略の一つとなり得る.

  • 宮本 光, 岩田 隆, 原 幹太朗, 山本 亜弥, 松本 学, 西山 典利
    2019 年 33 巻 2 号 p. 194-199
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    【症例】68歳女性.約30年前に胃潰瘍の手術歴あり.中咽頭癌と喉頭癌に対する放射線治療後に胸部CTにて左肺S6に20 mm大の結節と同S3に充実成分のないすりガラス型陰影を指摘され当科紹介受診.FDG-PETによる全身検索では左肺結節以外に異常集積はなかった.S6結節の切除生検で腺癌と診断されたため,一期的に左肺下葉およびS3楔状切除術,縦隔リンパ節郭清を施行.術後永久標本にて左肺S3病変は印環細胞の特徴をもつTTF-1陰性の腸型腺癌,S6病変はTTF-1陽性の肺腺癌と診断した.#5リンパ節に腸型腺癌の転移を認めたためTS-1+CBDCAによる術後化学療法を導入したが2コース目に嘔気のため中止.術23ヵ月後に多発骨転移,27ヵ月後に原病死した.【結語】画像上完全なすりガラス型陰影であっても縦隔リンパ節転移陽性で悪性度の高い肺癌が存在する可能性が示唆された.

  • 渡邉 裕樹, 岡阪 敏樹, 平松 義規
    2019 年 33 巻 2 号 p. 200-205
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は45歳の男性.突然の左背部痛を主訴に救急搬送された.既往に神経線維腫症1型(NF1)があった.造影CTで左大量胸水を認め胸腔ドレナージを施行,血性胸水を認め特発性左血胸と診断した.CTで左第11肋間動脈の蛇行・拡張を認めたが出血部位を特定できる明らかな所見は認めず,出血源検索および血腫除去を目的に審査胸腔鏡手術を施行した.左第11肋横関節近傍の壁側胸膜下に少量の出血を伴う拍動性の膨隆を認め,シート状組織接着剤を貼付,さらにフィブリン糊を噴霧したところ止血が得られた.術後8日目に肋間動脈造影を施行,第11肋間動脈瘤を認めたため本例は同動脈瘤の破裂による血胸であったと診断,塞栓術を行った.

    NF1では肋間動脈瘤破裂による血胸例の報告も散見されるため診断に際しては念頭に置く必要がある.本例のごとく胸腔鏡下に圧迫等の止血術を行い,二期的に塞栓術を行うことも治療法の選択肢となり得ると考えられた.

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