日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
悪性リンパ腫と鑑別を要した多房性胸腺囊胞の1症例
船崎 愛可岩井 俊本野 望関村 敦薄田 勝男浦本 秀隆
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2019 年 33 巻 2 号 p. 156-160

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抄録

悪性リンパ腫と鑑別を要した多房性胸腺囊胞を経験した.症例は40歳代,男性.左副腎腫瘍・睡眠時無呼吸症候群・気管支喘息の経過観察中にCT上多発する前縦隔腫瘍を認めた.腫瘍マーカーや自己抗体は陰性,FDG-PETでは腫瘤にSUVmax3~4の軽度の集積,MRI検査ではT2強調画像で内部が高信号の多房性腫瘍を認めた.腫瘍は巨大であるため悪性リンパ腫も疑い,全身麻酔下切除生検を行った.高度肥満により分離肺換気による胸腔鏡下生検は不可能と判断し,両肺換気,仰臥位で小開胸下縦隔腫瘍生検を行い,迅速病理検査で胸腺囊胞と診断されたため手術を終了した.囊胞壁とそれに連続する胸腺組織が見られ,リンパ濾胞の過形成が認められた.表層は扁平上皮で覆われていた.また,コレステリン結晶の析出や異形巨細胞の出現,肉芽組織の増生や,壁の硝子化,線維性の肥厚,リンパ節,形質細胞浸潤を認め多房性胸腺囊胞と診断した.術後経過は良好で,現時点で腫瘍の増大や悪性腫瘍・自己免疫疾患の合併は認めていない.

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