2019 年 33 巻 2 号 p. 166-171
肺アスペルギルス症に対する肺全摘は,膿胸や気管支瘻の頻度が高い術式である.症例は46歳,女性.肺結核後の喀血を伴う右肺全体に及ぶアスペルギルス症で受診,体力低下のため,術前2ヵ月外来でリハビリテーションを施行後,術前日に肋間動脈に血管塞栓術を行い,右肺全摘と広背筋弁による気管支断端被覆を施行した.術後合併症なく,第15病日に独歩退院となり,現在術後3年10ヵ月で外来通院中である.気管支断端被覆を行い,慎重な周術期管理を行うことで,術後合併症のリスクが高い肺アスペルギルス症右肺全摘症例において良好な経過が得られた.広背筋による気管支断端被覆は,断端瘻の予防に有用と思われた.