2019 年 33 巻 4 号 p. 442-447
症例は74歳,女性.腸閉塞で当院外科に入院した際の入院時胸部単純X線で右上肺野に47 mm大の腫瘤影を認めたため,当科紹介となった.外科退院後,当科にて気管支内視鏡検査を行ったところ,細胞診にてClass Vであった.胸部造影CT,PET CTを施行し,T2bN0M0,cStage IIAと診断した.またこの際の3D CTにて上肺静脈の上大静脈への還流異常(V4,5は下肺静脈と共通幹)を認め,部分肺静脈還流異常(PAPVR:partial anomalous pulmonary venous return)を合併した肺腺癌と診断した.術前経胸壁心臓超音波検査では推定肺動脈圧は33.9 mmHgと高値であったが,切除予定肺葉からの還流異常のため,術後心不全のリスクは低いと判断し,胸腔鏡併用下右上葉切除を行った.PAPVRは稀であり術前診断が困難で,手術時に確認されることが多い.自験例では術前3D CTにてPAPVRを指摘でき,適切な手術計画を立てることができた.