2019 年 33 巻 7 号 p. 714-718
副腎皮質癌は稀な疾患で,しばしばその診断に難渋するため,進行した症例が多く予後不良とされる.症例は60歳代女性,検診発見の胸部異常陰影を精査したところ,両側多発肺結節と左副腎腫瘍を指摘された.左副腎腫瘍摘出術を施行し,副腎皮質癌と診断された.多発肺結節に対して両側肺部分切除術を施行し,副腎皮質癌の肺転移と診断した.術後化学療法としてミトタンの投与を開始したが,再度両側肺の新たな結節を認め,計5回の肺部分切除術を施行した.いずれも副腎皮質癌の肺転移と診断した.副腎皮質癌術後5年10ヵ月が経過しているが,現在も生存中である.両側多発肺転移を伴った副腎皮質癌であったが,原発巣の切除後,肺転移巣を積極的に外科的切除することにより,比較的長期生存を得られる可能性が示唆された.