2020 年 34 巻 5 号 p. 311-315
症例は21歳女性.健診の胸部レントゲンで左下肺野異常陰影を指摘され受診となる.CTで胸部下行大動脈から起始して左肺底区に流入する径1.5 cmの異常血管を認め,肺底動脈大動脈起始症と診断した.気管支走行は正常で肺底区は肺静脈の拡張がみられた.肺高血圧や異常血管からの出血の危険性があるため,胸腔鏡下手術を行った.分画肺やその他の異常を認めず,肺組織が正常であったため,肺切除を行わず異常動脈のみを自動縫合器で切離した.術後経過は良好で,術後3日目に退院した.術後6ヵ月の造影CTでは,仮性瘤はなく異常血管は器質化し肺静脈の拡張は軽減していた.気管支異常を伴わない肺底動脈大動脈起始症に対しては自動縫合器による異常血管切離のみで治療し得る症例がある.