76歳男性.下顎腫瘤精査中に胸部X線写真で右肺に結節影を指摘された.経気管支肺生検で腺癌と診断され,造影CTの結果原発性肺腺癌cT1bN0M0と診断し手術を行うこととなった.その際のCTで上葉肺静脈と中葉肺静脈が上大静脈に還流する部分肺静脈還流異常と右B1気管支が気管から分岐する転位気管支分岐異常を認めた.手術は胸腔鏡下に開始したが解剖学的位置関係の把握が困難となり,最終的には小開胸を併用し胸腔鏡補助下に右肺上葉切除およびリンパ節郭清を施行した.本例では術前に両異常の存在を予測して手術に臨んだが,術中に解剖学的把握が困難となり,小開胸の併用を要した.稀な解剖学的異常が疑われる症例では,術前のCT画像をより理解することが重要であるが,術中に解剖の把握が困難になった際には,直視での確認が安全な手術の遂行に有用であった.