日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
ロボット支援下剣状突起下アプローチ胸腺腫摘除術後に胸腔間交通を認めた1例
原口 英里奈山田 紘之森 毅
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2022 年 36 巻 1 号 p. 91-95

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抄録

80歳,女性.偶発的に指摘された前縦隔腫瘍と左肺上葉の部分充実結節の加療のため当科を受診した.前縦隔腫瘍に対してロボット支援下剣状突起下アプローチ胸腺腫摘除術を施行した.左肺上葉のすりガラス結節は画像フォローとしたが,半年後に増大傾向であったため胸腔鏡下左上葉切除術を施行した.肺癌の術中に胸腔内洗浄液の回収不良を認め,術後のX線所見と合わせて胸腔間交通の存在が示唆された.右胸腔にもドレーンを留置し洗浄液を回収した.胸腔間交通は稀な病態で,両側気胸の術中に診断されることがある.本症例は肺癌術前から左右胸腔間交通の可能性を考慮していたため,術式は両側気胸のリスクとなる持続送気が必要なロボット支援下手術ではなく胸腔鏡下手術を選択した.縦隔手術既往症例に対する胸部手術の際には,胸腔間交通の可能性を視野に入れた手術プランや合併症予測が重要である.

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