2022 年 36 巻 5 号 p. 536-540
肺動静脈奇形は遺伝性出血性毛細血管拡張症に合併することが多い疾患であり,治療はコイルやプラグを用いた塞栓術が第一選択である.コイルの胸腔内穿破や膿胸といった合併症はこれまでに報告がない.症例は20歳代女性.遺伝性出血性毛細血管拡張症の既往があり,5年前に他院で右S10の肺動静脈奇形に対しコイル塞栓術を施行された.今回胸痛にて当院救急外来を受診,1度の右気胸を認め経過観察入院となった.入院後,炎症反応の上昇とともに胸水の貯留を認めた.局麻胸腔鏡検査を施行し,膿胸に加え臓側胸膜からコイルの露出を認めた.コイルの胸腔内穿破による膿胸と診断し,胸腔鏡下膿胸腔掻爬術を施行,コイル露出部位を縫合閉鎖した.術後も少量の血痰が持続し,術後3ヵ月のCTでコイル周囲に囊胞状病変を認め,気道との交通が疑われた.そのため約半年後に二期的に右下葉切除を施行した.右下葉切除後,症状再燃なく経過は良好だった.