日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
Print ISSN : 0919-0945
ISSN-L : 0919-0945
36 巻, 5 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
巻頭言
原著
  • 大村 彰勲, 木村 亨, 渡 洋和, 坂田 龍平, 川岸 紗千, 田中 諒, 馬庭 知弘, 岡見 次郎
    2022 年 36 巻 5 号 p. 486-490
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    当科における2009年1月から2019年9月までの肺癌肺切除症例1679例を後方視的に検討した.男性956例,女性723例,年齢中央値66歳,胃切除の既往を有した症例は51例であった.胃切除の既往を有する症例は,5例(9.8%)において術後肺炎を発症し,対照群(21例,1.3%)と比較して有意に多かった(p = 0.001).術後肺炎の有無で比較した多変量解析では,胃切除の既往(p < 0.001)と肺葉切除以上の術式(p = 0.040)が術後肺炎のリスク因子として同定された.肺癌肺切除症例において,胃切除の既往は術後肺炎の発症と関連する可能性があることが示唆された.胃切除術後の肺癌肺切除においては術後肺炎のリスクを考慮した周術期管理を行うべきである.

  • 古賀 大靖, 諸星 隆夫, 安藤 耕平, 亀田 洋平, 益田 宗孝
    2022 年 36 巻 5 号 p. 491-497
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    2013年4月から2018年12月までに横須賀共済病院で入院治療を行った胸部外傷60症例について検討した.受傷機転は転倒20例(33%),交通事故18例(30%),転落15例(25%)の順であった.肋骨骨折は53例(88%)に認め,本数は平均3.7±2.2本であった.血胸または気胸を58例(97%)に認め,そのうち42例(72%)で胸腔ドレナージを行ったが,5例では手術(止血術2例,肺漏閉鎖術1例,止血術+肺漏閉鎖術2例)を必要とした.入院期間は2~77日(平均13.7日)であり,入院中に死亡した症例は認めなかったが,10例は自宅退院が困難で転院となった.当院での転帰は比較的良好であったが,一般的に胸部外傷は他の受傷部位と比較して死亡率が高く,手術を必要とする重症例も多いため,初療時だけでなく入院後も適切な判断による治療が求められる.

  • 橋本 雅之, 余田 誠, 武田 恵子, 大塩 麻友美, 澤井 聡
    2022 年 36 巻 5 号 p. 498-503
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    本邦の保険診療上,術前未診断の肺悪性腫瘍に対するロボット支援胸腔鏡下手術(RATS)では,多くの場合,術中に同診断を得る必要がある.今回,術前診断の有無が手術に与える影響を検討した.2018年12月から2021年10月に当院でRATS肺葉切除を行った48例を対象に,術前未診断の34例を非Dx群,術前診断済の14例をDx群とし,後ろ向きに比較検討を行った.手術開始からコンソール開始までの時間は,非Dx群で有意に延長していたが,コンソール時間は,逆にDx群で有意に延長していた.手術時間は,非Dx群/Dx群が200分/221分であり,差は認めなかった.使用した自動縫合器カートリッジの平均数は,非Dx群/Dx群が6.5本/5.9本であり,非Dx群でやや多いものの有意差は認めなかった.以上より,術前未診断症例であっても,術前診断が得られた症例と同等にRATS肺葉切除を行うことが可能と考えられた.

症例
  • 大野 貴志, 三和 健, 窪内 康晃
    2022 年 36 巻 5 号 p. 504-510
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は53歳,男性.EGFR遺伝子変異陽性左下葉肺腺癌,cT2aN0pM1a,stage IVと診断した.Gefitinibを開始し,以降,分子標的薬および化学療法で加療したが,左下葉腫瘍は徐々に増大した.抗癌剤を拒否されサルベージ手術を希望されたことと,他に転移を認めなかったことから,サルベージ手術として左下葉切除術および横隔膜部分合併切除を行った.病理病期は,ypT3N0M0,stage IIBであった.術後osimertinibでの治療を継続したが,サルベージ手術から1年後に単発の肝転移を認めたため,ラジオ波焼灼療法を施行した.サルベージ手術から3年後に,単発の脳転移および縦隔リンパ節再発を認めたため,開頭腫瘍摘出術を行い,現在,縦隔リンパ節転移に対して放射線治療中である.長期生存が得られる例もあり,サルベージ手術が有用な場合もある.

  • 大竹 宗太郎, 小山 孝彦, 福冨 寿典, 加藤 良一
    2022 年 36 巻 5 号 p. 511-516
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は19歳,男性.咳嗽と発熱から肺炎が疑われ抗生物質で症状は改善したが,1週間後の健診で右肺門の異常影を指摘され当院を紹介された.胸部CTで右B1と中枢気管支との連続性が確認できず,途絶したB1根部は気管分岐部背側に存在する4.8 × 3.8 cmで内部にniveauを伴う囊胞性病変と交通していた.また肺静脈V1+2+3は上大静脈に流入しており,縦隔囊胞と部分肺静脈還流異常を合併した気管支閉鎖症と診断した.気管支閉鎖症が原因と考えられる肺炎を繰り返していたため,右上葉と縦隔囊胞を一塊に摘出した.摘出検体では縦隔囊胞と気管支の交通を確認し,囊胞は病理組織学的に食道囊胞と診断した.部分肺静脈還流異常を伴い食道囊胞に交通した先天性気管支閉鎖症の稀な1手術例を経験したため報告する.

  • 本間 直健, 網島 優, 南 尚哉
    2022 年 36 巻 5 号 p. 517-523
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    肺ノカルジア症は血行性播種し,時に脳膿瘍を認めるが,胸膜外膿瘍を認めることは稀である.今回,悪性腫瘍との鑑別を要した脳膿瘍および胸膜外膿瘍を伴う肺ノカルジア症の1例を報告する.

    49歳女性.重症筋無力症の加療で低免疫状態であった.高熱の精査で施行したCT所見で多発肺浸潤影を認めた.10日後のCT所見で多発胸膜結節が出現し,脳造影MRI所見で左頭頂葉に径5 mmの結節を認めた.早期診断のため胸腔鏡下試験開胸術を行い,胸膜外膿瘍が確認された.培養により放線菌を疑う糸状菌を認め,遺伝子解析の結果,千葉大学真菌医学研究センターで実施された16S-ribosomal DNA配列に基づきNocardia farcinicaと同定され,同センターに保存された(IFM11783).最終的に肺ノカルジア症と診断した.経口トリメトプリム/スルファメトキサゾールを術後11ヵ月継続し,治療後2年経過し再発を認めない.

  • 長 靖, 加地 苗人, 椎名 伸行, 野村 俊介, 本橋 雄介, 佐藤 昌明
    2022 年 36 巻 5 号 p. 524-530
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は,49歳男性.血痰,胸痛を主訴に当院初診.CT上,左肺S1+2cに54×43 mmの空洞性病変と両側多発結節を認めた.また肝後区域に石灰化を伴う119×87 mmの腫瘤と右副腎腫瘤を認めた.気管支鏡検査施行も診断はつかず,確定診断目的に胸腔鏡下左肺S5部分切除を施行した.病理診断はエキノコックス症であり,肝後区域原発,両側多発肺転移,右副腎転移の診断となった.原発巣および右副腎は切除可能と判断し,呼吸器症状を考慮し肺の可及的切除を優先した.右肺および左肺多発結節に対し2期的に部分切除を施行した.その後,肝後区域切除+肝S2部分切除+胆囊摘出術+右副腎摘出を施行した.病理結果はすべてエキノコックス症であった.診断確定後よりalbendazole投与を開始し継続中である.術後12年3ヵ月残存肺病変の増大なく経過している.

  • 梅田 将志, 三竿 貴彦, 妹尾 知哉, 鹿谷 芳伸, 青江 基, 中村 聡子
    2022 年 36 巻 5 号 p. 531-535
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    胸腺リンパ上皮腫様癌は,胸腺癌の一亜型に分類され,未分化型上咽頭癌であるリンパ上皮腫癌に類似した病理組織像を有している.国際胸腺悪性腫瘍研究会は,胸腺リンパ上皮腫様癌は胸腺癌全体の6%程度と稀であると報告している.今回我々は,胸腺リンパ上皮腫様癌に対して外科的切除および術後放射線療法を施行した一例を経験したので,文献的考察を加えて臨床像について報告する.

    症例は68歳,男性.検診の胸部CT検査にて前縦隔に10 mm大の小結節影を認め,精査加療目的に当科紹介となった.前縦隔の小結節影は緩徐に増大傾向を示したため,正岡I期の胸腺腫疑いで左胸腔鏡下胸腺部分切除術を施行した.病理組織検査では,胸腺原発のリンパ上皮腫様癌であると診断された.術後は放射線照射療法を施行し,術後37ヵ月現在,無再発生存中である.

  • 竹野 巨樹, 井上 玲, 飯村 泰昭, 寺村 一裕
    2022 年 36 巻 5 号 p. 536-540
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    肺動静脈奇形は遺伝性出血性毛細血管拡張症に合併することが多い疾患であり,治療はコイルやプラグを用いた塞栓術が第一選択である.コイルの胸腔内穿破や膿胸といった合併症はこれまでに報告がない.症例は20歳代女性.遺伝性出血性毛細血管拡張症の既往があり,5年前に他院で右S10の肺動静脈奇形に対しコイル塞栓術を施行された.今回胸痛にて当院救急外来を受診,1度の右気胸を認め経過観察入院となった.入院後,炎症反応の上昇とともに胸水の貯留を認めた.局麻胸腔鏡検査を施行し,膿胸に加え臓側胸膜からコイルの露出を認めた.コイルの胸腔内穿破による膿胸と診断し,胸腔鏡下膿胸腔掻爬術を施行,コイル露出部位を縫合閉鎖した.術後も少量の血痰が持続し,術後3ヵ月のCTでコイル周囲に囊胞状病変を認め,気道との交通が疑われた.そのため約半年後に二期的に右下葉切除を施行した.右下葉切除後,症状再燃なく経過は良好だった.

  • 楫山 健太, 眞鍋 堯彦, 佐古 達彦, 花桐 武志
    2022 年 36 巻 5 号 p. 541-546
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は72歳男性.咳嗽,左前胸部痛を主訴に当院を受診した.来院時の胸部CTにて左胸腔内に巨大腫瘤が認められ,腫瘤による縦隔偏位および左肺気管支の圧排による無気肺が認められた.エコーガイド下に針生検を施行し,組織診断の結果,脱分化型脂肪肉腫が疑われた.手術は胸腔鏡下に開始し,腫瘤を摘出する際に左第4肋間開胸を施行した.術中所見では腫瘍は前縦隔より発生しており,左肺および胸壁などの周囲組織への浸潤は認められなかった.病理学的精査の結果は脱分化型脂肪肉腫の診断であった.今回われわれは前縦隔に発生した巨大腫瘤を呈した脱分化型脂肪肉腫の切除例を経験した.腫瘍切除に際して,腫瘍が巨大であるため通常開胸では視野確保が困難であり,胸腔鏡下操作が有用であった一例と考えられた.

  • 松岡 弘泰, 松原 寛知, 国光 多望, 中島 博之
    2022 年 36 巻 5 号 p. 547-553
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    末梢挿入型中心静脈カテーテル(Peripherally inserted central catheter:以下PICC)は,中枢挿入型に比べて挿入が簡便で危険性が低い.両者に共通して,稀な合併症としてカテーテル先端の血管外穿破や膿瘍形成が知られている.当科で経験したPICCによると判断された縦隔炎の一例を報告する.

    症例は60歳男性で,下咽頭癌に対する化学療法中の発熱・食事摂取困難に対し,PICCが留置された.一時的な炎症所見改善の後に再増悪した.挿入後15日目にカテーテル閉塞のため抜去したが,同日のCTで縦隔炎を認めた.緊急で胸腔鏡下縦隔切開術を施行し,集中治療を要したが救命しえた.

    中心静脈カテーテルが原因と考えられる縦隔炎の報告は自験例を含めて9例あり,その内3例が感染による縦隔炎との判断から手術治療が行われた.抗癌剤や高カロリー輸液による化学性炎症であれば保存治療可能であるが,感染を疑った場合には速やかに手術に踏み切るべきである.

  • 西田 梨紗, 菱田 智之, 政井 恭兵, 加勢田 馨, 江本 桂, 淺村 尚生
    2022 年 36 巻 5 号 p. 554-561
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    Ehlers-Danlos症候群(EDS)はコラーゲンやその修飾酵素の遺伝子異常により結合組織脆弱性を来す遺伝性疾患群である.我々はEDS合併の気胸手術を2例経験した.症例1は43歳女性,網膜剥離の既往と両肺多発空洞を有していた.左初発気胸に対し左肺下葉の空洞性病変を切除したが,staple lineおよび把持した肺実質から気漏を生じ修復を要した.既往,術前画像,術中所見からEDSを疑い,術後の遺伝子検査にて古典型EDSの診断に至った.症例2は38歳女性,下行結腸穿孔の既往があり血管型EDSと診断されていた.右気胸再発に対し右肺上葉の囊胞縫縮術を施行したが,把持した肺実質から気漏を認め,肺部分切除と壁側胸膜擦過を追加した.2例とも切除標本では組織中の弾性線維は維持されていたが肺実質は極めて脆弱であり,EDS合併が疑われる気胸手術では組織脆弱性に注意した愛護的な操作が肝要である.

  • 堀川 恭佑, 三竿 貴彦, 梅田 将志, 鹿谷 芳伸, 青江 基
    2022 年 36 巻 5 号 p. 562-566
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    胎児型肺腺癌は胎児肺類似成分で構成された稀な腫瘍である.今回我々は高悪性度胎児型肺腺癌の2切除例を経験した.いずれも肺葉切除とリンパ節郭清が施行された.症例1では胎児型肺腺癌成分と腺房型腺癌成分が混在し,症例2は純粋な胎児型肺腺癌であった.2例ともにリンパ節転移を認めず,病理病期はそれぞれIB,IA3であった.症例1では術後1年半の時点で脳転移をきたして再発した.一般に高悪性度胎児型肺腺癌の予後は通常型腺癌に比べて不良とされるが,薬物療法の有効性や最適なレジメンなどについては未だ明らかとはいえない.さらなる症例の蓄積により,臨床病理学分析が進むことが期待される.

  • 肥塚 智, 東 陽子, 坂井 貴志, 佐藤 史朋, 栃木 直文, 伊豫田 明
    2022 年 36 巻 5 号 p. 567-574
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    間質性肺炎合併肺癌は間質性肺炎急性増悪の危険性を考慮しながら治療方法を検討する必要があり,間質性肺炎の重症度によっては治療選択に難渋する場合がある.今回我々は重症度分類IV度の間質性肺炎を合併した肺癌症例に対する外科治療を経験したため文献的考察を加えて報告する.症例は73歳女性.間質性肺炎合併右下葉肺癌疑いにて前医では加療困難と判断され当院紹介受診となった.血液ガス分析では安静時PaO2 68.1 torr,6分間歩行試験でSpO2最低値は83%であり,間質性肺炎重症度はIV度にて労作時の在宅酸素療法導入が必要な状態であった.周術期管理を工夫し胸腔鏡下右肺下葉部分切除術を施行,重篤な合併症なく自宅退院となった.病理診断は扁平上皮癌pT1cN0M0-stage IA3期で,術後4年経過し無再発生存中である.

  • 仲澤 順二, 新関 浩人, 京極 典憲, 楢﨑 肇, 上村 志臣, 八木 優樹
    2022 年 36 巻 5 号 p. 575-579
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    胸水ドレナージ後の稀な合併症の一つにEx Vacuo Pneumothoraxというものがある.これは慢性胸膜炎により脆弱化かつ硬化した臓側胸膜が,胸水を抜かれた空間に生じる陰圧によって,損傷し発症する気胸である.当院では,過去10年でこのEx Vacuo Pneumothoraxを2例経験した.両症例とも悪性胸水ドレナージ後,肺が全拡張できずに気胸を発症した.悪性胸水に生じたEx Vacuo Pneumothoraxの治療方法は議論のあるところであるが,自験例は耐術能があり,エアリークも多かったため外科治療を行った.両症例とも胸腔鏡で胸腔内を確認すると肺にブラはなく,気瘻が複数認められた.癌性胸膜炎に伴う臓側胸膜の脆弱化を考慮して,気瘻部位の切除は行わずに,タコシールやネオベールシートなどで補強して手術を終了し,エアリークをコントロールすることができた.

  • 南方 孝夫, 新谷 裕美子, 氷室 直哉, 遠藤 哲哉, 武井 秀史
    2022 年 36 巻 5 号 p. 580-583
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は66歳,女性.1ヵ月前より近医で双極性障害と診断され通院治療を受けていた.刃渡り20 cmの包丁で左頸部,両手首,左胸部を刺し,倒れているのを発見され,当院へ救急搬送された.胸部CTで左血気胸,腹腔内free airを認めた.胸腔ドレナージ後も出血が持続し,血圧低下を認めたため,胸腔鏡による緊急手術を行った.第7肋間前腋窩線,第7肋間後腋窩線にアクセスポートを作成した.肺・心膜・横隔膜損傷を認め下横隔膜動脈から出血していた.出血部位の止血,横隔膜・肺損傷部位を縫縮した.腹腔内を横隔膜損傷部位から観察し,臓器損傷が無いことを確認した.手術時間2時間35分,術前/術中の出血量は1800/720 mlで輸血を8単位行った.術後第3病日に胸腔ドレーンを抜去し,第8病日に他院へ転院した.

  • 近藤 薫, 渡邉 元嗣, 古川 真一, 塩谷 俊雄, 片岡 和彦
    2022 年 36 巻 5 号 p. 584-589
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    肺放線菌症は画像では肺癌や肺結核等との鑑別を要し,診断に難渋し外科切除に至る症例が多い慢性化膿性肉芽腫性疾患である.診断が確定しても抗菌薬加療に抵抗し外科切除に至る症例もある.症例①は85歳男性.血痰を認め前医を受診し,CTで左下葉に腫瘤影を認め当院を受診した.原発性肺癌が強く疑われたため左下葉切除術を施行し,病理結果で肺放線菌症の診断となった.術後は抗菌薬加療を行わなかったが再発なく経過している.症例②は64歳女性.血痰を認め前医を受診し,CTで右中葉浸潤影と気管支拡張像を指摘され当院を受診した.確定診断には至らず,臨床的に非結核性抗酸菌症として抗菌薬加療を行った.しかし症状再燃を繰り返すため胸腔鏡下右中葉切除術を行い,肺放線菌症が疑われた.術後診断が確定する前に症状が再燃した.今回は再燃を防ぎ得なかったが,術後肺放線菌症が強く疑われた際は速やかに抗菌薬加療を開始した方が良いと考えられた.

  • 大貫 雄一郎, 小泉 竜之介, 武藤 護, 笹沼 玄信, 松原 寛知, 中島 博之
    2022 年 36 巻 5 号 p. 590-595
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    線維形成性小円形細胞腫瘍(desmoplastic small round cell tumor:DSRCT)は若年男性の腹腔に好発する希少な高悪性度腫瘍である.今回DSRCTの心膜発生例を経験したので報告する.症例38歳,女性.心タンポナーデによるうっ血性心不全に対し,前医で心囊ドレナージを施行された.心囊液は血性で細胞診にて異型細胞が検出されたため,精査目的に当院紹介となった.CTでは心膜の肥厚と多量の心囊液を認めたが,心膜以外に原発巣を疑う病変は確認されなかった.組織採取と心囊液ドレナージを目的に,胸腔鏡下心囊開窓術を施行した.病理組織学的検討の結果,DSRCTの診断に至った.診断後5年経過しているが,遠隔転移は認めていない.DSRCTは腹腔外臓器にも発生し得るが,本邦における心膜発生の報告は本症例が初めてである.DSRCTの中には本症例のように,非典型例も存在する.

アンケート報告
  • 竹ヶ原 京志郎, 栢分 秀直, 中橋 健太, 篠原 周一, 分島 良, 長谷川 誠紀
    2022 年 36 巻 5 号 p. 596-611
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    昨今の呼吸器外科医は, ”キャリアパス“, ”修練と教育“, ”働き方改革“など, 抱える悩みは多いと推測されるが, 現在までにその実情に関する報告はない. 第73回日本胸部外科学会定期学術集会の特別企画セッションにおいて, 呼吸器外科医全体を対象としたアンケート調査を実施し, 集計したデータを元にリアルタイムで討論を行った. 対象となる呼吸器外科領域登録会員数は2471名で, 有効回答数は472名(19.1%)であった. アンケート結果では, ①「若手」の修練環境にばらつきがあるという現状, ②「若手」のキャリアパスへの関心の強さ, ③呼吸器外科医の満足度が比較的高いこと, ④「若手」と「指導医」のギャップが少なからず存在することが明らかになった. 今回のアンケート調査とセッション内での議論が, 呼吸器外科医の現状を示す一助になり, 今後の修練の標準化やキャリアパス支援, 世代間ギャップの是正に繋がることを期待して, 本報告を作成した.

feedback
Top