日本呼吸器外科学会雑誌
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原著
肺癌臨床病期IA期における区域切除から肺葉切除に術中術式変更された症例の検討
原田 柚子今井 一博髙嶋 祉之具中 麻衣子松尾 翼南谷 佳弘
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2022 年 36 巻 6 号 p. 621-626

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抄録

区域切除はIA期の非小細胞肺癌(NSCLC)に対する標準的治療の一つであるが,根治を目的として区域切除を行う際は適切なリンパ節転移の評価と,切除断端の確保が必須である.本研究の目的は,術中判断で区域切除から肺葉切除に移行した症例の頻度と理由,予後を検討することである.当院で2014年から2020年までに臨床病期IA期のNSCLCに対して区域切除が予定された121名の転帰を検討した.121例中8例が術中診断と術者の判断により区域切除から葉切除に変更されていた.4例が術中迅速診断でリンパ節転移陽性の診断,4例は手術手技に関する問題が変更の主な要因となっていた.リンパ節転移の評価には迅速免疫組織化学染色も併用した.区域切除を完遂した患者(n=113)と肺葉切除術に変更した患者(n=8)の間で,全生存期間に有意差はなかった(P=0.5828).適切な術中の判断がなされれば,術前に区域切除の適応と考えられた症例のうち,肺葉切除すべき症例を発見することができる.

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© 2022 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
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