日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
Print ISSN : 0919-0945
ISSN-L : 0919-0945
36 巻, 6 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
巻頭言
原著
  • 工藤 智司, 出口 博之, 友安 信, 重枝 弥, 兼古 由香, 吉村 竜一, 菅野 紘暢, 齊藤 元
    2022 年 36 巻 6 号 p. 614-620
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    自然気胸患者におけるPS(Performance Status of Spontaneous Pneumothorax:PSSP)を新たに提案した上で,続発性自然気胸の術後合併症予測因子に関して検討した.2015年1月1日から2021年5月31日の期間に,当院で手術を行った続発性自然気胸患者に対し統計解析を行った.164例のうち,術後合併症は37例,術後死亡は3例であった.PSSP(0/1/2/3/4)の合併症率は0/8.6/27.3/56.3/66.7%,死亡率は0/0/0/6.3/33.3%であった.術後合併症の独立した危険因子として,PSSP(3-4),BMI(<16),血清アルブミン値(<3.5)に有意差を認めた.PSSP:3以上,低BMI,低アルブミンの患者で,術後合併症率が有意に高いことが示唆された.

  • 原田 柚子, 今井 一博, 髙嶋 祉之具, 中 麻衣子, 松尾 翼, 南谷 佳弘
    2022 年 36 巻 6 号 p. 621-626
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    区域切除はIA期の非小細胞肺癌(NSCLC)に対する標準的治療の一つであるが,根治を目的として区域切除を行う際は適切なリンパ節転移の評価と,切除断端の確保が必須である.本研究の目的は,術中判断で区域切除から肺葉切除に移行した症例の頻度と理由,予後を検討することである.当院で2014年から2020年までに臨床病期IA期のNSCLCに対して区域切除が予定された121名の転帰を検討した.121例中8例が術中診断と術者の判断により区域切除から葉切除に変更されていた.4例が術中迅速診断でリンパ節転移陽性の診断,4例は手術手技に関する問題が変更の主な要因となっていた.リンパ節転移の評価には迅速免疫組織化学染色も併用した.区域切除を完遂した患者(n=113)と肺葉切除術に変更した患者(n=8)の間で,全生存期間に有意差はなかった(P=0.5828).適切な術中の判断がなされれば,術前に区域切除の適応と考えられた症例のうち,肺葉切除すべき症例を発見することができる.

症例
  • 戸田 洋, 木村 愛彦
    2022 年 36 巻 6 号 p. 627-632
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    症例は56歳,女性.喘鳴と右胸背部痛を主訴に前医を受診し,胸部単純X線検査で大量の右胸水を認めたため,持続胸腔ドレナージが開始された後,当院へ転院した.胸部CT検査では右胸腔内に不整に造影される長径9 cm大の腫瘍を認め原発性肺癌が疑われたが,胸水細胞診では悪性所見は得られなかった.腫瘍マーカーの上昇は認めなかったが,胸水中アミラーゼ値が異常高値であったため,アミラーゼ産生肺癌などを念頭に置き,診断目的に手術を施行した.胸腔内は強固に癒着していたものの,剥離を進めると前縦隔から右胸腔内に有茎性に発育する,充実成分と囊胞成分が混在した腫瘍を認め,肉眼的に完全切除を行った.術中迅速診と永久標本の病理組織学的所見は,いずれも成熟奇形腫の診断であった.

    胸腔内に穿破した成熟奇形腫の報告は多いが,胸腔内に有茎性に発育し穿破した症例は検索し得ず,非常に稀な症例と考えられた.

  • 蜂須賀 康己, 藤岡 真治, 魚本 昌志
    2022 年 36 巻 6 号 p. 633-638
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    症例は48歳,男性.健康診断の胸部単純X線写真で異常影を指摘され当院を受診した.造影CTで左後縦隔に被膜を有する5.5×5.3×5.0 cmの腫瘤を認めた.良性囊胞性腫瘍を疑い切除術を行った.術中所見で腫瘍は胸腔内迷走神経由来であった.病理検査の結果,高度な囊胞変性を伴ったancient schwannomaと診断した.迷走神経由来の後縦隔ancient schwannomaのまれな1例を経験した.

  • 徳永 拓也, 上田 和弘, 梅原 正, 武田 亜矢, 内匠 浩二, 佐藤 雅美
    2022 年 36 巻 6 号 p. 639-646
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    4D flow MRIでの肺動脈本幹内の渦流は肺高血圧症における特徴的な所見とされている.今回,肺葉切除術後に致死的呼吸不全を発症した症例で発症前の4D flow MRIで肺動脈本幹内の渦流を認めた.症例は68歳男性.右上葉肺癌で右上葉切除術が行われた.8年前に左肺下葉切除術の既往あり.NCDリスク評価で呼吸不全発症率0.2%だった.術後19日目に呼吸不全を発症した.術後6日目の4D flow MRIを後方視的に検討し肺動脈本幹に渦流を認めた.肺高血圧症患者では肺動脈本幹内の渦流と肺動脈圧が相関すると言われている.本症例では肺切除術後の4D flow MRIで渦流を認め,肺高血圧状態の可能性が示唆された.術後の肺予備能の低下が肺動脈圧上昇の改善を妨げていると推察した.4D flow MRIにより肺葉切除術後に渦流を認めた症例を経験した.致死的呼吸不全の予兆であった可能性がある.

  • 闞 秋明, 田川 公平, 石田 輝明, 西村 光世, 青山 克彦
    2022 年 36 巻 6 号 p. 647-654
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    胸腺腫治療中に赤芽球癆と重症筋無力症を併発した症例を経験したため報告する.症例は67歳女性.正岡分類IVa期の胸腺腫に対し,ステロイドパルス療法を施行した後,2013年9月に両肺上葉の一部と左横隔神経,心囊の合併切除を伴う拡大胸腺摘出術を施行した.術後カルボプラチン+nab-パクリタキセル療法を4コース施行した後,残存した胸膜播種に対し追加切除を施行した.2015年9月に右胸膜播種再発に対し,カルボプラチン+nab-パクリタキセル療法を4コース再施行し,nab-パクリタキセル維持療法を追加した.その後,胸膜播種巣が再燃するたびに化学療法を追加施行した.2016年2月に高度の貧血を認め,骨髄生検から赤芽球癆と診断した.プレドニゾロン投与によって貧血は改善したが,2017年4月に肺動脈血栓塞栓症,白内障,骨粗鬆症の副作用を認めたため,プレドニゾロンの投与を終了した.2019年7月,複視が出現し,重症筋無力症と診断され,ピリドスチグミン臭化物とタクロリムスの内服を開始し,症状は改善した.2021年2月,赤芽球癆が再燃したため,タクロリムスを中止し,シクロスポリンを導入した.3週間後,貧血は改善し,重症筋無力症の再燃も認めなかった.2022年1月現在(初回手術後8年4ヵ月)ADL(Activities of Daily Living)を保ったまま担癌生存している.

  • 元石 充, 堀 哲雄, 山下 直己
    2022 年 36 巻 6 号 p. 655-659
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    初発症状として心タンポナーデを来たした胸腺腫の報告は少ない.症例は74歳女性.労作時の息切れを主訴に受診した.胸部単純X線写真で心拡大を指摘され,胸部CTで心囊水貯留および前縦隔腫瘍を指摘された.心タンポナーデに対し心囊ドレナージが行われ自覚症状は軽快した.採取された心囊水の細胞診は陰性であった.完全切除可能と判断し前縦隔腫瘍に対し手術を行った.心囊内には明らかな播種は認めず,腫瘍は連続性に心囊内に進展しており胸腺組織および心膜合併切除を施行した.術後経過は良好,病理学的に多角形上皮細胞とリンパ球の増殖が認められAB型胸腺腫と診断された.現在術後1年を経過するが胸腺腫の再発を認めず,心囊水貯留もなく経過している.

  • 田中 諒, 石田 大輔, 坂巻 靖
    2022 年 36 巻 6 号 p. 660-665
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    症例は72歳女性.特発性肺線維症の治療中に右下葉結節を認め,CTガイド下生検により小細胞肺癌と診断された.特発性肺線維症の影響で,高度低肺機能であったが,右下葉切除を想定した場合の予測術後肺機能が許容範囲内であることと,IA期小細胞肺癌である点を考慮し,右下葉切除+ND2a-2を施行した.術後病理診断は,pT1cN0M0の高悪性度胎児型腺癌であった.術後補助療法は行わず,術後2年現在無再発生存中である.高悪性度胎児型腺癌は非常に稀な疾患でありこれまで特発性肺線維症を併発した報告はない.今回文献的考察を加えて報告する.

  • 喜田 裕介, 林 一喜, 花岡 淳
    2022 年 36 巻 6 号 p. 666-670
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    コレステリン肉芽腫は,コレステロール結晶と異物巨細胞を特徴とする肉芽腫である.中耳では比較的症例は多いが,その他の部位に発生することはまれな疾患である.症例は55歳,男性で,脂質異常症の加療を行うもコントロール不良にて当院紹介となった.全身精査で胃の消化管間質腫瘍と縦隔腫瘍を認め,当科紹介となった.CTで前縦隔に多房性で,左腕頭静脈を挟み込むように頭尾側に長く広がる陰影を認めた.MRIではT1およびT2強調画像で低信号となる腫瘤像構造を認めた.FDG-PETではSUV max 9.4の集積を認め,胸腺癌・悪性リンパ腫疑いとして診断と治療目的に手術の方針となった.胸腔鏡下縦隔腫瘍摘除術を施行した.一部左腕頭静脈に固着していたものの剥離することが可能で,腫瘍を胸腺と一塊として摘出した.境界明瞭な充実性の腫瘤で,割面は灰白色調であった.病理診断でコレステリン肉芽腫と診断した.

  • 岡田 和大, 藤原 俊哉, 平野 豊, 牧 佑歩, 松浦 求樹
    2022 年 36 巻 6 号 p. 671-676
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    本態性血小板増多症は血小板の量的,機能的,形態学的異常を示す慢性骨髄増殖性疾患に属する.症例は69歳男性.検診で右下葉肺癌疑いの病変を指摘され,手術の方針となった.下肢静脈血栓症,急性心筋梗塞の既往があり,ワルファリンとアスピリンを内服していた.初診時血液検査で血小板数が154.3×104/μLと異常高値であり,血液内科で本態性血小板増多症と診断された.ヒドロキシウレアの内服で血小板数は77.9×104/μLまで低下したが,血栓症のリスクが高いと考えられた.術前にワルファリンはヘパリンに置換し,アスピリンは継続し,胸腔鏡下右下葉切除術を施行した.術後は出血や血栓による合併症はなく,術後9日目に退院となった.本態性血小板増多症合併肺癌手術においては深部静脈血栓症や術後出血,肺静脈血栓に留意した管理が重要である.

  • 川口 瑛久, 徳井 俊也, 村上 理彦, 井上 良哉, 平野 弘嗣, 馬瀬 泰美
    2022 年 36 巻 6 号 p. 677-682
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    症例は71歳男性.胸部X線異常陰影を指摘された.胸部CTで左上葉に2.5 cm大の結節影があり,気管支鏡生検で腺扁平上皮癌の診断を得た.左上葉肺癌cT1bN0M0,stage IA2と診断,左上葉切除術+ND2a-1の方針となった.術中所見で肉眼的にS6葉間面に癒着していたことからS6部分合併切除とした.切除標本から腫瘍径30×25 mm大の腫瘤が確認できた.組織学的所見から,扁平上皮癌と腺癌の衝突癌と診断.pT2aN0M0,stage IBであった.本人の希望により経過観察とし,術後3年11ヵ月後に再発,化学療法を施行するも術後4年2ヵ月後に死亡となった.長期にわたり術後経過を観察した経験から衝突癌について文献的考察を加え報告する.

  • 柴田 英克, 眞田 宗, 鈴木 実
    2022 年 36 巻 6 号 p. 683-687
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    症例は71歳男性,咳嗽を主訴に近医を受診.胸部X線写真上,右上肺野に巨大な腫瘤を認め当院へ紹介受診となった.他院で9年前に右肋骨腫瘍を指摘されていたが,2年で経過観察から外れていた.胸部X線写真上,9年前の腫瘍は8.4×6.5 cmであったが,受診時は16.4×13.4 cmであった.後側方切開で手術を施行.第2肋骨全摘および第3肋骨の部分切除を行い,腫瘍を摘出した.術後合併症は認めなかった.術後病理検査でも骨線維性異形成で,悪性転化は認めなかった.骨線維性異形成は一般的な良性腫瘍で,無症状なら保存的治療が行われる.四肢の長管骨に発生した場合,切除による機能障害の可能性から切除をためらうこともあるが,肋骨に発生した場合は,切除による機能障害は大きなものではない.増大してからの切除は侵襲が大きくなり,また,悪性転化の可能性もある.よって,肋骨発生の骨線維性異形成は積極的に切除を行うべきである.

  • 小林 政雄, 石田 大輔, 坂巻 靖
    2022 年 36 巻 6 号 p. 688-693
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    症例は67歳の男性.食道癌術後8ヵ月時点で右上葉肺尖部に腫瘤像を指摘された.腫瘤の画像診断は肺内血腫とされたが,診断時にCTで最大径5.0 cmであったのが49日後には8.3 cmに達し,悪性腫瘍が疑われた.病変は食道癌治療前のCTで右上葉に0.8 cm大の結節として描出されていたが,炎症性変化との診断であった.気道内出血を避けるため生検は行わず,右上葉切除を施行した.肺多形癌p-T2bN0M0 p-StageIIAと診断された.術後5年無再発を確認しフォローを終了した.肺多形癌は急速に増大する傾向が指摘されており,本症例のように画像診断が肺内血腫であっても比較的急速に増大する例では悪性腫瘍の潜在を疑い,早い段階で切除を決断すべきと考えられた.

  • 末吉 国誉, 大坪 巧育, 廣田 晋也, 小島 史嗣, 板東 徹
    2022 年 36 巻 6 号 p. 694-699
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    49歳女性.発熱,咳嗽,喀痰,左上肢浮腫を主訴に紹介受診した.CT画像検査で,7.5 cm大の前縦隔腫瘍および,左腕頭静脈閉塞と上大静脈狭窄,右上葉浸潤,心囊水貯留を認めた.腫瘍に対するエコー下針生検で胸腺扁平上皮癌(cT3 N0 M1a,Stage IVA)の診断となった.逐次的化学放射線療法を施行したところ,原発巣の縮小と心囊水の消失が得られた(ycT3 N0 M0,ycStage IIIA).コンバージョン手術の方針とし,胸腺摘除術,上大静脈・右肺上葉・右横隔神経・心膜合併切除,上大静脈再建術を行った.アプローチは胸骨正中切開および右肋間開胸を予定した.しかし,左腕頭静脈の閉塞と変性が静脈角近傍まで及んでおり,左transmanubrial approachを追加することで上大静脈の再建が可能となった.顕微鏡的切除断端陰性が得られ,術後14ヵ月時点では再発を認めていない.

  • 溝口 敬基, 坂井 貴志, 東 陽子, 佐藤 史朋, 栃木 直文, 伊豫田 明
    2022 年 36 巻 6 号 p. 700-705
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    症例:40歳代女性.甲状腺乳頭癌に対して7年前に手術歴があり,経過観察のために施行した胸部CTで6年前から出現し,増大傾向のある前縦隔結節を指摘された.前縦隔両側にそれぞれ最大径2.3 cm,2.2 cm大の境界明瞭な結節影を1ヵ所ずつ認め,PET-CTで集積を認めたことから,甲状腺癌の縦隔リンパ節転移が疑われた.診断目的に胸腔鏡下右側胸腺・腫瘍摘出術を先行,腫瘍は最終病理診断でB1型胸腺腫,正岡I期となった.その時点で左側病変については胸腺腫の多発病巣を疑い,二期的に胸腔鏡下左側胸腺・腫瘍摘出術および左肺部分切除術を施行した.左側病変はB2型胸腺腫,正岡II期の診断となり,現在術後2年経過し無再発生存中である.

    前縦隔に多発結節が指摘された際には,多発胸腺腫の可能性を念頭に置くべきである.ただし,他癌の転移や悪性リンパ腫の可能性が否定できず,術前・術中に診断が困難な場合には,二期的手術が選択肢となる.

  • 深見 朋世, 小島 史嗣, 廣田 晋也, 矢田 圭吾, 板東 徹, 松藤 凡
    2022 年 36 巻 6 号 p. 706-710
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    肺内型気管支原性囊胞は先天性囊胞性肺疾患の一型であり,幼児期の胸腔鏡下手術が推奨されているが,実際に経験することは稀である.今回,我々は,出生前診断された後縦隔囊胞性病変に対して,1歳5ヵ月時に外科的介入を行った.8K胸腔鏡を用いて小児外科・呼吸器外科合同で手術を施行し,右下葉S8から隆起する囊胞性病変を認めたことから,肺内型気管支原性囊胞と診断した.下肺静脈との癒着のため最終的にはS8区域切除でなく右下葉切除を要したが,高精細映像を70インチの大画面で共有することにより,肺動脈・気管支の剥離を各区域支レベルで安全に進めることができ,胸腔鏡補助下手術を完遂し得た.8K胸腔鏡により得られる拡大視効果やズームアップ機能は,狭い小児の胸腔で作業空間を確保し,精度の高い低侵襲手術を行う上で非常に有用であると考えられた.

  • 竹村 千尋, 四倉 正也, 青木 輝, 吉田 幸弘, 中川 加寿夫, 渡辺 俊一
    2022 年 36 巻 6 号 p. 711-714
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    肺の先天的形成不全は多くが小児期に他の合併奇形を伴い発見される.成人で発見される例は稀で,形成不全を伴う肺の手術例はさらに稀である.今回我々は,中葉形成不全を伴う右肺の上葉に発生した肺癌に対して手術を施行した.症例は79歳,女性,非喫煙者.検診を契機に発見され,CTで4.7 cm大の充実性腫瘤を呈する右肺上葉肺癌疑い病変(T2bN0M0 臨床病期IIA)に対して手術の方針とした.CTにて中葉の肺動静脈および肺実質の構造は認められず,中葉気管支は入口部から約5 mmで盲端となっており中葉形成不全と診断した.手術は右肺上葉切除術を施行し,形成不全となった中葉部分には臓側胸膜のわずかな「たわみ」を認めたのみで,肺実質は存在しなかった.右肺上葉の病変は病理学的には肺腺癌でT2bN0M0 病理病期IIAであった.肺の形成不全部分の構造を手術によって確認した例は未だ存在しないと考えられるため報告する.

  • 別府 樹一郎, 大薗 慶吾, 坂梨 渓太
    2022 年 36 巻 6 号 p. 715-720
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    外傷性気管気管支損傷は稀だが致死率が高い.症例は15歳男性.交通事故で当院に救急搬送された.来院時,高度意識障害を認めたが,血圧や自発呼吸は保たれていた.胸部X線では気胸を認めず,CTで縦隔気腫と右主気管支の途絶を認め気管支損傷が疑われた.右胸腔ドレーンを留置したがエアリークはなかった.他に頭蓋内損傷を認めたが緊急手術の必要はなく,直ちに右主気管支損傷に対する手術を行った.ダブルルーメンチューブが挿入困難であったため,気管切開後に6.5 mmスパイラルチューブを左主気管支に留置した.後側方切開で開胸し,縦隔胸膜を切開し奇静脈を切離した後,右主気管支の完全断裂を確認した.部分的にデブリドマンを行った後,端々吻合による気管支形成を行い修復した.術後吻合部合併症は認めなかったが,意識障害が改善せず術後19週目にリハビリ施設へ転院となった.主気管支断裂例の救命には迅速な外科治療が重要と考えられた.

feedback
Top