2022 年 36 巻 6 号 p. 688-693
症例は67歳の男性.食道癌術後8ヵ月時点で右上葉肺尖部に腫瘤像を指摘された.腫瘤の画像診断は肺内血腫とされたが,診断時にCTで最大径5.0 cmであったのが49日後には8.3 cmに達し,悪性腫瘍が疑われた.病変は食道癌治療前のCTで右上葉に0.8 cm大の結節として描出されていたが,炎症性変化との診断であった.気道内出血を避けるため生検は行わず,右上葉切除を施行した.肺多形癌p-T2bN0M0 p-StageIIAと診断された.術後5年無再発を確認しフォローを終了した.肺多形癌は急速に増大する傾向が指摘されており,本症例のように画像診断が肺内血腫であっても比較的急速に増大する例では悪性腫瘍の潜在を疑い,早い段階で切除を決断すべきと考えられた.