2023 年 37 巻 4 号 p. 160-166
近年,基礎疾患をもたない膿胸患者の報告が散見され,一部に口腔内常在細菌の関与が指摘されている.本稿は2012年から2022年の10年間に当院で急性膿胸に対し胸腔鏡下膿胸腔掻爬術を施行した31例を対象とし,特にその要因として歯性感染症に注目して臨床・細菌学的因子について後方視的に集計,検討した.31例の内,口腔内感染症に起因すると考えられる症例は7例(22.6%)であり,既報告の12.0~33.3%と概ね同等であった.これらの症例はいずれも糖尿病やステロイド内服の既往は無く,齲歯や重度の歯周炎を放置している症例が目立った.急性膿胸の一因として歯性感染症が一定の割合を占めており,口腔衛生環境を含めた病歴の聴取,口腔ケアの重要性について改めて認識すると共に,日常生活から予防の実践,啓蒙に努めることが重要であると考える.