日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
下行大動脈の授動により安全に切除し得た胸管囊胞の一例:左胸腔から胸管へのアプローチの工夫
沖 智成山下 貴司望月 孝裕
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キーワード: 胸管, 胸管囊胞, 下行大動脈
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2023 年 37 巻 7 号 p. 640-645

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抄録

症例は44歳の男性で健診の胸部X線写真で異常を指摘され当科に紹介となった.胸部CT,MRIで大動脈遠位弓部背側に胸管に接する囊胞を認め,胸管囊胞の疑いで手術を施行した.頭側の胸管は左鎖骨下動脈,食道,椎体の間で確保して結紮切離した.尾側の胸管は肋間動静脈を切離して下行大動脈を腹側へ授動することにより視野が得られ,下行大動脈,食道,椎体の間で確保して結紮切離した.大動脈,食道,椎体に囲まれた組織を一塊に切除することにより,胸管を含む胸管囊胞を摘出した.術中および術後に乳びの流出は認めなかった.胸管囊胞を疑って手術をする場合,胸管を適切に処理する必要があるが,左胸腔から胸管にアプローチする機会は少なく,手技は定型化されていない.今回,下行大動脈の授動と縦隔臓器を剥離面とした縦隔組織の一括摘除により,縦隔左側に生じた胸管囊胞を囊胞および胸管を損傷することなく安全に切除可能であったため報告する.

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