抄録
胸壁合併切除のうち前胸部上部から側方にかけての部位は手術手技上問題の多いところである.大動脈弓からの3分枝の走行に従って同部をA, B, C, Dの4カ所に分け, 各部位におけるアプローチや画像診断につき論じた.Aは最内側で左側を例にとり総頸動脈や左鎖骨下動脈との関係を, B, C, Dからは右側を例にとり, そのやや外側, 鎖骨中央部, 腋窩部の順で各々腕頭動脈右鎖骨下動脈, 腋窩動脈, 及び同静脈, 腕神経叢との関係を述べた.Aでは胸骨正中切開を, Bでは肺門部の処理先行を, C, Dでは追加皮切の重要性を強調した.腫瘍とこれら重要血管との関係を術前に知るには患側からのenhanced CTによる鎖骨下静脈の描出は欠かせず, その情報量は血管造影やMRIよりも多い.