抄録
デスモイド腫瘍は小児や比較的若年者層の筋や腱膜などの軟部組織に発生し, とくに腹壁外に発生したものでは周囲組織へ浸潤性に増殖する傾向が強いため, 浸潤部位によっては致命的となりうる疾患である.今回教室において胸壁に発生した本症を経験したので文献的考察を加えて考察する.症例は22歳, 女性.左側胸部腫瘤を主訴に来院.胸部レ線, 胸部断層撮影, X腺CT, MRI-CT, 骨シンチならびに経皮針生検を行い, これらより, aggresive fibromatosis (extra-abdominal desmoid) が強く疑われた.腫瘍は第4, 5肋間への浸潤をみとめ肋骨との剥離も困難であったため, 第4~6肋骨を含む10×7cmの胸壁合併切除を行い, 欠損部位については2枚重ねにしたMarlex mesh にて補填した.術後経過は良好であり, 12ヵ月後現在, 再発徴候もみられていない.