日本呼吸器外科学会雑誌 呼吸器外科
Online ISSN : 1884-1724
Print ISSN : 0917-4141
ISSN-L : 0917-4141
転移性肺腫瘍を疑った肺犬糸状虫症の1例
福瀬 達郎中村 聡人小阪 真二玉田 二郎
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 4 巻 1 号 p. 93-99

詳細
抄録
犬飼育歴のある農業従事者の68才男性の肺犬糸状虫症の1例を経験した.患者は, 耳下腺粘表皮癌の手術後に胸部X線上右下肺野に直径約1cmの銭型陰影を発見され当科受診した.3ヵ月間に陰影の拡大を認め, 転移性肺腫瘍の疑いで肺部分切除を行った.腫瘤ば右S6に存在し, 大きさは12×11×10cmで弾性硬, 黄白色で白色半透明な膜で被包化されていた.病理標本でDirofilaria immitisの雄虫体が肺動脈に塞栓しているのがみつかり, 肺犬糸状虫症と診断した.術後酵素抗体法, 寒天ゲル二重拡散法を行い, 共に陽性であったが他にも交叉反応を認めた.本症は最近報告例が増加しており, 銭型陰影を呈する疾患の鑑別診断として考慮すペきと思われた.また, 自験例のように比較的短期間で陰影が拡大することもあり, 診断率向上のため免疫反応の感受性, 特異性の向上, 生物学的態度の解明が必要と考えられる.
著者関連情報
© 日本呼吸器外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top