日本呼吸器外科学会雑誌 呼吸器外科
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呼吸器外科手術における自己血輸血の有効性について
渡辺 真純橋詰 寿律川村 雅文加藤 良一菊池 功次小林 紘一石原 恒夫半田 誠池田 康夫
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1990 年 4 巻 6 号 p. 774-777

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抄録

輸血後肝炎,AIDS,ATL等の輸血を介した感染症,あるいはGVH等の免疫反応による副作用の発生防止を目的として,呼吸器外科領域の開胸および開胸に準じた手術が予定された症例に対して自己保存血輸血を使用してきた.69例に200から1000ml,平均520mlの採血を行った.採血の行われた疾患は,肺癌34例,縦隔腫瘍11例,肺結核症8例,転移性肺腫瘍3例,その他13例で,術式は肺摘除3例,肺葉切除33例,肺区域切除3例,肺部分切除7例,縦隔腫瘍摘出7例,拡大胸腺摘出5例,気管切除3例,その他8例であった.全69例のうち57例83%は同種血輸血を必要としなかった.肺摘除,肺葉切除,肺区域切除の行われた39例でも術中出血量1230mlの症例を含め,28例72%で同種血輸血を必要としなかった.自己血輸血のみを行った症例では輸血に起因すると思われる発熱,発疹,肝機能障害等を認めなかった.自己保存血による自己血輸血法は簡便であり患者に与える負担も軽微で,呼吸器外科手術において有効な方法と思われた.

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© 1990 日本呼吸器外科学会
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