日本呼吸器外科学会雑誌 呼吸器外科
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肺癌脳転移切除例に対する開頭術中照射の意義
加勢田 静西村 嘉裕酒井 忠昭池田 高明
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1992 年 6 巻 4 号 p. 460-465

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抄録

28例の肺癌脳転移症例に対し, 原発巣の切除と脳転移巣の切除を行った.28例全体の5年生存率は13%であった.組織型別では, 大細胞癌の予後が良好で, 2例が61ヵ月と110ヵ月生存中である.脳の切除を先行した症例が18例, 肺の切除を先行した症例が10例あったが, 何れの群も5年生存率は13%であった.開頭術中照射を行った症例が12例あった.うち, 7例は開頭術中照射後, 全脳照射を併用し, 5例は開頭術中照射のみ行った.5年生存率はそれぞれ, 16.7%と33.3%であり, 全脳照射は必ずしも必須であるとは言えなかった.また, 全脳照射群では, 脳萎縮痴呆化などの放射線障害が高頻度にみとめられたが, 開頭術中照射のみ行った群では, このような副作用はみられなかった.したがって, 脳転移切除後, 開頭術中照射のみを行うと, 予後の改善が期待できるだけでなく, 全脳照射を行った症例, とくに高齢者で発生しやすい精神機能障害を回避できるものと思われた.

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