1996 年 10 巻 2 号 p. 107-111
胸腺腫を合併しない重症筋無力症症例に対する外科的治療として, 拡大胸腺摘出術が最も有用な方法として評価され, 標準術式として施行されてきた.この手術はこれまで胸骨縦切開にて施行されてきたが, 良性疾患に対する手術としては手術創も大きく, 術後の痺痛も軽微ではなかった.そこで, 我々は頚部襟状切開を併用して胸腔鏡下に拡大胸腺摘出術を施行する方法を考案し, 2症例に施行した.この方法は Pericardial fat pad の切除のため手術時間は長くかかるが, 手術侵襲が軽く, 術後癖痛が軽微であり, 手術創も小さく目立たず有用な方法と思われた.2症例ともに術中・術後の合併症はなく, 重症筋無力症に対する効果も良好であった.