日本呼吸器外科学会雑誌
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10 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 八板 英道, 石田 照佳, 斉藤 元吉, 丸山 理一郎, 西岡 憲一, 光冨 徹哉, 杉町 圭蔵
    1996 年 10 巻 2 号 p. 95-97
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    自然気胸の106例の患者に対して行ったのべ117件の手術を開胸手術群, 胸腔鏡手術群, 胸腔鏡手術から開胸手術に変更した群の3群に分類して, それぞれについて手術時間, 出血量, ドレナージ期間, 術後在院期間を調べ, 比較検討した.胸腔鏡手術による自然気胸の治療は手術時間, ドレナージ期間, 術後在院期間が有意に短く, 出血量も有意に少なかった.
  • 吉竹 毅, 高浜 龍彦, 金井 福栄, 大西 清, 鈴木 毅, 亀谷 雄一郎, 中田 博, 糸山 進次, 菅原 勇, 増永 敦子, 中村 寿 ...
    1996 年 10 巻 2 号 p. 98-106
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症 (MG) 胸腺リソバ濾胞の区画性と細胞調節因子の特異性について, 細胞の増殖, 分化および移動に関連を持つ細胞外matrix糖蛋白tenascinと, 細胞調節に関与するapoptosis抑制遺伝子産物bcl-2の発現を, 手術により切除したMG症例の胸腺とリンパ節の濾胞について免疫組織染色を行い比較検討した
    .MG胸腺濾胞は細いtenascin線維に囲まれているが, リンパ節濾胞にはこの囲みは認められなかった.濾胞発達のない胸腺にもtenascin線維の囲みは認められなかった.
    Bcl-2発現では, 胸腺濾胞胚中心部細胞に発現を認めたが, リソパ節濾胞には殆ど認めなかった.
    以上の所見はリンパ節にはないMG胸腺濾胞の特異的区画性を示し, その区画内で, リンパ節濾胞と異なる細胞調節が行われ, 異常自己免疫抗体産生B cellが選択的細胞死を免れ, 抗体産生を続けていることを示唆している.
  • 安藤 陽夫, 東 俊孝, 塚崎 高志, 青江 基, 伊達 洋至, 清水 信義
    1996 年 10 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    胸腺腫を合併しない重症筋無力症症例に対する外科的治療として, 拡大胸腺摘出術が最も有用な方法として評価され, 標準術式として施行されてきた.この手術はこれまで胸骨縦切開にて施行されてきたが, 良性疾患に対する手術としては手術創も大きく, 術後の痺痛も軽微ではなかった.そこで, 我々は頚部襟状切開を併用して胸腔鏡下に拡大胸腺摘出術を施行する方法を考案し, 2症例に施行した.この方法は Pericardial fat pad の切除のため手術時間は長くかかるが, 手術侵襲が軽く, 術後癖痛が軽微であり, 手術創も小さく目立たず有用な方法と思われた.2症例ともに術中・術後の合併症はなく, 重症筋無力症に対する効果も良好であった.
  • 小鹿 猛郎, 向山 憲男
    1996 年 10 巻 2 号 p. 112-116
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    1982年11月から1995年3月までに当院で手術を行った自然気胸症例は356例で両側自然気胸症例は, 55例 (15.4%) であった.うち両側同時気胸10例, 両側異時気胸45例 (術後対側気胸発症群32例, 両側異時気胸手術群13例) であった.
    1) 両側同時気胸は他の気胸に比べ10歳台で発症する傾向があり, 両側一期的手術が望ましい.
    2) 両側異時気胸は, 両側気胸歴を有する症例においては, 一側術後の対側再発率が高く, 両側手術療法が望ましく, 特に10歳台では両側一期的手術が望ましい.3) 10歳台で発症する気胸は将来対側発症の危険があり十分な対側の観察が必要である.
  • 田尻 道彦, 石井 治彦, 山形 達史, 石橋 信
    1996 年 10 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    当センターにおいて切除した原発性肺癌680例のうち, 腫瘍最大径3cm以下の末梢部肺癌168例を対象とし, 縮小手術や胸腔鏡下手術の標準術式としての可能性について考察した.最大径2<, ≦3cmではn2が腺癌26.4% (19例), 扁平上皮癌12.5% (2例), pm1は腺癌15.3% (11例) 認められ, 肺葉切除と標準的リンパ節郭清が必要と思われた.最大径1<, ≦2cmでは, n2は腺癌のみ13.6% (6例), pm1は腺癌6.8% (3例), 扁平上皮癌12.5% (1例) 認められ, 肺葉切除が必要と思われ, 特に腺癌の場合は標準的リンパ節郭清が必要と思われた.最大径1cm以下では, 全例リンパ節転移も肺内転移もなく縮小手術は可能と思われた.現時点では, リンパ節郭清の問題が未解決であり, 最大径1cmを超える原発性肺癌では, 縮小手術や胸腔鏡下肺葉切除の適応とするには, 臨床病理組織学的諸因子による十分慎重な検討を要すると思われる.
  • 中野 昇, 清本 徹馬, 栗原 陽次郎, 貴島 弘樹
    1996 年 10 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    肺癌手術時の気管支断端に対して, 器械縫合を行った77例と手縫い縫合を行った73例の術中気管支断端エアーリークについて比較した.術中気管支断端エアーリークを器械縫合群の1葉切では55例中10例 (18.2%), 2葉切では15例中4例 (26.7%), 肺摘除では7例中0例 (0%) に認め, 全体では77例中14例 (18.2%) であった.術中気管支断端エアーリークを手縫い縫合群の1葉切では59例中5例 (8.5%), 2葉切では8例中0例 (0%), 肺摘除では6例中0例 (0%) に認め, 全体では73例中5例 (6.8%) であった.術中気管支断端エアーリークを器械縫合群と手縫い縫合群で比較すると, 有意に (p<0.05) 器械縫合群が高率であったが, 術中気管支断端エアーリークを認めて追加縫合を行った症例には, 術後気管支断端瘻を認めなかった.
  • 向田 尊洋, 青江 基, 伊達 洋至, 森山 重治, 安藤 陽夫, 清水 信義
    1996 年 10 巻 2 号 p. 128-133
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    我々は, 全身麻酔下の分離換気ではリスクの高い難治性気胸に対して, 術前に胸膜造影にてair leakageの部位を同定した後, 局所麻酔と硬膜外麻酔の併用により胸腔鏡下手術を施行し, 良好な結果を得た2例を経験したので報告する.症例1は67歳の男性で, 右下葉よりのair leakageによる難治性気胸があり, 塵肺, 多発性ブラ, 高度肺気腫を合併していたため上記手術を施行した.症例2は72歳の男性で, 左下葉よりのair leakageによる難治性気胸があり, プレドニンを内服中で, 両肺の高度肺気腫と多発性ブラの合併を認め上記手術を施行した.2例とも術中の癖痛管理は可能で, 術中の咳反射もコントロールでき, 視野を十分確保できた.また, 術中の呼吸・循環管理に問題はなかった.
  • 君野 孝二, 仲宗根 朝紀, 岸川 正夫
    1996 年 10 巻 2 号 p. 134-138
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    72歳, 男性, 1991年12月, 右上葉末梢発生の扁平上皮癌で右上葉切除施行, p-T2N0M0絶対治癒切除.術後経過観察中, 1994年11月, 右下肺野に腫瘤陰影出現, 気管支鏡検査で右B9にポリープ状の腫瘤を認めた.右下葉切除施行, 気管支内発育をしめす肺腺癌と診断された.腫瘤径は16×10mmでp-T1N0M0絶対治癒切除を行った.末梢発生扁平上皮癌と気管支内にポリープ状発育を示した腺癌の異時性重複癌の切除例を経験したので報告する.
  • 佐藤 幸夫, 淀縄 聡, 木下 朋雄, 石川 成美, 鬼塚 正孝, 赤荻 栄一, 三井 清文, 三井 利夫
    1996 年 10 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性, 15年前に左肺癌に対し左肺上葉切除術が施行された.約4か月前から出現した断続的な小量の喀血の精査と治療を目的として当院を受診した.胸部単純X線写真・胸部CTにて左S8に不整形の硬化像を, 気管支鏡検査にて左肺下葉気管支の屈曲・狭窄を認めたが肺癌再発の所見はなかった.左肺下葉の換気低下のため炎症が繰り返され気管支動脈が発達, 喀血の原因となったと判断, 気管支動脈塞栓術を計6回施行したが効果は一時的であった.喀血の頻度と出血量が増加してきたことから手術の適応とし, 気管支の屈曲狭窄が原因のため部分切除では不十分と判断し, 左残存肺全摘術を施行した.病理組織検査にてアスペルギルスの感染が証明された.術後経過は良好で患者は1ヵ月で退院し, 術後6ヵ月の現在肺アスペルギルス症の再発の所見もなく外来通院中である.
  • 渡辺 俊一, 土持 雅昭, 下川 新二, 宮崎 俊明, Masafumi Yamashita, 平 明
    1996 年 10 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    今回我々は, 胸壁デスモイド腫瘍の1例を経験した.本症は稀で発生には外傷の関与が指摘されている.症例は43歳男性で1993年2月に左鎖骨および左第4肋骨を骨折した.1994年3月に左胸痛が出現し, 胸部X線で腫瘤陰影を認めた.同年5月胸膜腫瘍の疑いで腫瘍摘出術を行った.腫瘍は骨折部位に一致して2個あり, fibromatosisの病理組織診断を得た.術後は良好に経過したが, 同年12月に腫瘍の再発を認め再入院した.腫瘍は肺尖部から左鎖骨, 左側胸壁にみられ外科的切除は左上肢の機能障害を生じると判断され, 総線量60Gyの放射線照射を行った.現在照射後6ヵ月を経過したが, 腫瘍の増大傾向はない.
  • 仲宗根 朝紀, 君野 孝二, 岸川 正大
    1996 年 10 巻 2 号 p. 150-154
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は, 38歳女性.胸部X線上異常陰影の精査のため当院受診.胸部X線上右中肺野に嚢胞陰影を混在した浸潤影を呈し, CTでは正常肺組織に接して隔絶された領域を認めた.気管支造影では, 右中肺野に気管支の分布を認めず, 上葉, 中葉気管支は各々圧排されていた.種々の血管造影では異常動脈を検出し得なかったが, 肺葉内分画症を疑い手術施行した.S4領域の一部は嚢胞状変化を来し, 胸部大動脈から直径約3mmの異常血管が流入していた.稀な中葉発生の肺葉内分画症と診断し, 中葉切除術を施行した.
  • 植田 信策, 薄田 勝男, 岡庭 群二, 小野 貞文, 谷田 達男, 藤村 重文
    1996 年 10 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    血管周皮細胞腫が胸壁に発症することは稀であるが, 今回我々は胸部X線写真により発見された若年女性の血管周皮細胞腫に対する手術を経験した.腫瘤摘出術の病理所見より血管周皮細胞腫が疑われたため, 再開胸し腫瘤付着部の胸壁を部分切除した.本症例では2年前より腫瘍の存在したことが胸部X線写真で認められており, 以降自覚症状はなく, また腫瘍陰影の増大もなかった.このため術前に悪性腫瘍の可能性が低く評価されることとなった.検索しえた範囲では血管周皮細胞腫の胸壁発症例は本邦で9例目であり, これらの検討から本腫瘍の胸壁発症は女性に多く (8例), 右胸壁優位 (8例) であり, 若年者にも発症が多い (4例) 傾向が認められた.これらは他の部位原発例の発症傾向とは異なるものであった.本腫瘍は呼吸器外科領域では稀な疾患であるが, 若年者にも発症し, 再発率が高いことから診断, 治療選択には十分な注意が必要であると考えられた.
  • 上吉原 光宏, 平井 利和, 川島 修, 森下 靖雄
    1996 年 10 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は39歳女性.小児時より肺炎, 喀血を繰り返していた.検診で右横隔膜上の異常陰影を指摘され当科を受診とした.胸部CTでは右横隔膜ヘルニアの他に, 左下葉に4×5cm大の楔状陰影がみられた.肺分画症を疑い血管造影を行ったところ, 腹腔動脈より左下葉へ流入する複数の異常血管を認めた.肺分画症の診断で左下葉切除を行った.異常動脈は食道裂孔より上行しつつ肺靱帯を経由して左S10へ流入していた.腹腔動脈から異常血管が分岐した肺葉内肺分画症 (ILS) は稀なことから報告した.
  • 黒谷 栄昭, 乾 健二, 福瀬 達郎, 横見瀬 裕保, 池 修, 水野 浩, 和田 洋巳, 人見 滋樹
    1996 年 10 巻 2 号 p. 166-170
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は37歳男性.集団検診で胸部異常陰影を指摘されたため入院.精査の結果, 右肺門部リンパ節腫大が疑われたが他臓器に腫瘍病巣を認めず手術を施行した.手術所見では肺に異常認めず, 腫瘍は中下葉間のリソパ節であり, 術後の病理組織学的検索では腺癌のリンパ節転移の診断が得られた.縦隔#3リンパ節にも転移を認めた.術後の検索でも他に腫瘍性病変は発見できなかった.本症例は極めて稀なTON2MO肺癌と考え, 術後化学療法を施行した.現在術後6ヵ月が経過しているが再発の兆候なく健在である.
  • 山下 智弘, 大崎 敏弘, 吉松 隆, 小山 倫浩, 中西 浩三, 中西 良一, 杉尾 賢二, 安元 公正
    1996 年 10 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    右胸腔内横隔神経に発生した神経鞘腫の1例を経験した.症例は70歳, 男性.高血圧治療中に胸部X線写真で右下肺野に辺縁明瞭な腫瘤陰影を認めた.1991年4月, 縦隔腫瘍 (心膜嚢腫疑い) の診断で摘出術を施行した.腫瘍は5×4×3cmの右横隔神経から発生した神経鞘腫であった.横隔神経鞘腫は極めて稀な疾患で文献上本邦において13例の報告を見るのみである.
  • 平井 一成, 三好 新一郎, 前部屋 進自, 鈴間 孝臣, 別所 俊哉, 谷野 裕一, 吉増 達也, 内藤 泰顯
    1996 年 10 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は75歳女性.stage I肺扁平上皮癌に対する右下葉切除の2年後に気管癌を発症し, 気管管状切除を行った.組織型は肺癌と同じく扁平上皮癌であったが臨床的に重複癌と診断した.気管癌は気管分岐部の上3cmの部位から声門側3.5cmを占めており, 右開胸による手術も可能と思われたが前回手術による胸腔内の癒着を考慮し, 胸骨正中切開と頚部襟状切開でアプローチした.縦隔リンパ節郭清による癒着はあったが気管周囲の授動とsuprahyoid release で8気管軟骨輪を切除し端々吻合を行うことが出来た.大網被覆により吻合部の治癒は良好であったが, 患者は術後9ヵ月, 局所再発により死亡した.右下葉切除後の気管形成においては, 肺靱帯・下肺静脈の切離により右胸腔内の授動は終了しており, 上部気管の授動としてsuprahyoid releaseが有用と思われた.
  • 立花 秀一, 川上 万平, 折野 達彦, 中尾 圭一, 時津 浩輔, 森田 琢也, 小玉 敏宏, 垣内 成泰, 麻田 邦夫, 佐々木 進次郎
    1996 年 10 巻 2 号 p. 182-190
    発行日: 1996/03/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    胸部大動脈への浸潤が明らかな肺扁平上皮癌に対し術前化学療法, 左肺摘除と一時的バイパス下に大動脈の合併切除・人工血管置換を行い良好な結果をえた.拡大手術として有用と思われ, 手術手技の面から大動脈合併について検討した.下行大動脈外膜への浸潤例では送血用カニューラを用いた一時的バイパス下の下行大動脈の管状切除 (8cm) と再建の際, 前方腋窩開胸でもリンパ郭清を含め十分な術野が得られた (症例1).大動脈遠位弓部への浸潤に対し, 肺と大動脈をen blocに切除した例では, 左心耳からの左心バイパスの利用が妥当であり, 遠位弓部および鎖骨下動脈の再建には後側方切開が適していた.大動脈浸潤は組織学的には瘢痕性癒着であり, 術前化療によるstagedown と判定された.剥離時, 大動脈浸潤の有無の判断は困難であることから, かかる術式の採用は妥当である (症例2).一時的バイパスを駆使する方法は安全かつ根治的な切除を可能とするものであり, 積極的に試みるべき方法と考えられる.
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