日本呼吸器外科学会雑誌
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若年女性の右胸壁に発症したHemangiopericytomaの一手術例
植田 信策薄田 勝男岡庭 群二小野 貞文谷田 達男藤村 重文
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1996 年 10 巻 2 号 p. 155-160

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抄録

血管周皮細胞腫が胸壁に発症することは稀であるが, 今回我々は胸部X線写真により発見された若年女性の血管周皮細胞腫に対する手術を経験した.腫瘤摘出術の病理所見より血管周皮細胞腫が疑われたため, 再開胸し腫瘤付着部の胸壁を部分切除した.本症例では2年前より腫瘍の存在したことが胸部X線写真で認められており, 以降自覚症状はなく, また腫瘍陰影の増大もなかった.このため術前に悪性腫瘍の可能性が低く評価されることとなった.検索しえた範囲では血管周皮細胞腫の胸壁発症例は本邦で9例目であり, これらの検討から本腫瘍の胸壁発症は女性に多く (8例), 右胸壁優位 (8例) であり, 若年者にも発症が多い (4例) 傾向が認められた.これらは他の部位原発例の発症傾向とは異なるものであった.本腫瘍は呼吸器外科領域では稀な疾患であるが, 若年者にも発症し, 再発率が高いことから診断, 治療選択には十分な注意が必要であると考えられた.

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