1997 年 11 巻 1 号 p. 90-94
左迷走神経由来の神経鞘腫に対して胸腔鏡下摘出術を施行した.症例は76歳の女性で, 胸部X線にて左肺門部に腫瘤陰影を認めた.胸部CTでは下行大動脈側方に葉間肺動脈を圧迫する大きさ35×35mmの腫瘤を認め, 造影効果陽性であった.胸腔鏡下に観察すると, 腫瘤は肺下葉と軽い癒着を認め, 癒着を剥離後, 縦隔胸膜を切離した.腫瘤は迷走神経との連続性を認めたため, 鏡視下に腫瘤の被膜を剥離し, 迷走神経を温存して被膜下核出術を施行した.病理診断は良性神経鞘腫で術後合併症はなかった.胸腔内迷走神経由来の神経鞘腫は比較的まれで本邦報告例は自験例を含めて39例である.手術手技上, 迷走神経の切断が問題となるが, 鏡視下での神経を温存した被膜下核出術も年齢や悪性か否かを考慮すればよい術式の一つと考えられる.