抄録
症例は76才女性, 主訴は労作時呼吸困難2年前より胸部異常陰影を指摘されていたが, 症状が軽度のため放置していた.数ヵ月前より症状が増悪したため来院した、精査の結果横行結腸, 大網を内容とするMorgagni孔ヘルニアと診断した.一般的には, 呼吸機能の低下した横隔膜ヘルニアに対しては開胸術による呼吸機能の低下を避けるために, 開腹経路による根治術が行われることが多い.しかし今回我々は, ヘルニア嚢による圧迫により無気肺が認められること, 胸腔内に癒着の可能性があることから開胸経路による手術を施行した.術後呼吸機能は低下せず, むしろ著明に改善したことより, Morgagni 孔ヘルニアの術式として, 開胸術が, 必ずしも呼吸機能の低下を来すわけではなく胸腔内での癒着や, 無気肺などが疑われる症例に対しては積極的に開胸経路による手術を施行しても良いと考え報告した.