抄録
症例は72歳女性.胸部異常陰影を主訴として来院した.画像診断では, 上前縦隔に内腔に突出する充実性腫瘤の部分を有する嚢胞性病変であった。左腕頭静脈は嚢胞の尾側を回り込むようにして下大静脈下部に流入していた.タリウムシンチグラフィーでは充実性腫瘤の部分に取り込みがあった.血中SCCは1.8ng/mlと軽度上昇していた.以上の所見をもとに腫瘤摘出術を施行した.病理学上, 胸腺嚢胞に合併した胸腺扁平上皮癌であった.本症例は右腕頭静脈の走行より先天性嚢胞と考えられ, 同部に胸腺癌を併発したものと思われた.