抄録
生体腎移植約2年後, 免疫抑制剤投与中に発症した肺クリプトコッカス症に対し胸腔鏡を用いて診断・治療を行った一例を報告した.症例は49歳男性, 飼育歴, 居住歴に特記事項はない.糖尿病性腎症から腎不全に移行し, 2年前に生体腎移植を受けた, 術後順調に経過していたが, 外来経過観察中胸部X線写真で左中肺野に結節陰影の出現をみた.身体所見, 検査所見に異常はなく, 気管支鏡検査で確定診断が得られなかったため, 術当日まで免疫抑制剤投与を続け, 胸腔鏡を用いて病巣の切除を行い肺クリプトコヅカス症と診断した.術後翌日より経口摂取, 免疫抑制剤投与を再開し, 術後シクロスポリン濃度は大きな変動を示さなかった.術前に採取した血清でクリプトコッカス抗原は高値であった.
侵襲の少ない胸腔鏡手術は, 移植後免疫抑制剤投与に伴う肺真菌感染症の診断治療に有効であると考えた.