抄録
症例は64歳, 男性.生来健康.左自然気胸を発症し, 当院紹介となった.胸部X線写真・胸部CT検査にて, 心嚢気腫像と心臓の左側への偏位及び下葉底区の無気肺を認め, 左心膜欠損のため心臓が左胸腔に逸脱したと判断した.左開胸術下で直視下に観察したところ, 左心膜及び隣接壁側胸膜の完全欠損を認めた.ブラを切除後, 下葉を十分に吸痰・加圧したところ, 肺の再拡張を認め, 心臓の固定も安定した.左心膜は完全欠損であるが, 嵌頓をおこす恐れは無いと判断し, 心膜の形成は行わなかった, 術後経過は順調である.