抄録
症例は49歳女性.労作時呼吸困難と喘鳴を主訴に紹介受診.胸部X線上声帯から約6cmの気管右側壁に約2cm大の腫瘤陰影を認めた.胸部CT上第2から第3胸椎の高さの気管右側壁から膜様部にかけて隆起性病変を認めたが, 気管外への浸潤は認めなかった.気管支鏡にて, 気管分岐部より口側5軟骨輪部から上方約2cmにわたる粗大顆粒状の腫瘤を認め, 生検にて扁平上皮癌の診断を得た.気管内腔が径約5mmに狭窄していたので, 窒息を回避するため緊急でNd-YAGレーザーを行い, 後日根治手術を行った.手術は頸部襟状切開と胸骨正中切開を加え, 気管を7軟骨輪管状切除し端々縫合した.気管切除断端近傍まで癌浸潤を認めた事と口側切除断端に高度異形成を認めたので, 術後CDDP+VDS+MMCを1クール追加した.術後2年10ヵ月現在再発徴候はない.また, 術前Empey係数が15.0ml/l/minと高かったが, 術後6ヵ月時には, 6.5ml/l/minに低下していた.