日本呼吸器外科学会雑誌
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肺癌肺切除後の気管支瘻による膿胸に対する保存的治療法とその適応
薄田 勝男斎藤 泰紀高橋 里美半田 政志吉田 浩幸島田 和佳羽隅 透佐藤 伸之佐藤 雅美佐川 元保藤村 重文
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1998 年 12 巻 4 号 p. 511-518

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抄録

肺癌肺切後の気管支断端瘻が原因で膿胸となった肺癌9例を対象として, 保存的治療の方法およびその適応を検討した.術式は, 7例が右下葉切除, 1例が左下葉切除, 1例が右上葉管状切除 (one stoma type) であり, リンパ節郭清は8例でR2bを, 1例でR1を施行した.保存的治療で6例 (67%) が気管支断端瘻確認後14~67日 (平均31.5日) に瘻が治癒した.いずれも (1) 残存肺葉の再膨張が期待できること, (2) 気管支壊死が限局していること, (3) 対側肺の吸引性肺炎が無いか軽度であった.気管支切断端に限局した気管支瘻による膿胸は, 膿胸腔のチューブドレナージ (患側が下となる側臥位) ・体位ドレナージにて対側の吸引性肺炎を予防し, 有効な抗生物質の投与と高カロリー栄養法により保存的に根治可能であった.残る3例 (33%) では, 気管支切除端から中枢の気管支にかけて広範に気管支壊死を認め, 対側肺吸引を引き起こし保存的治療が奏功せず観血的治療を考慮しなければならなかった.

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