抄録
症例は67歳男性.13年前, 左肺上葉に腺癌 (高分化, p-TINOMO) を発症し左上葉切除術を施行した.3年前, 左肺下葉に腺癌 (中分化, p-T3NOMO) を発症し, 残存左下葉切除術 (compietionpneumonectomy) を施行した.今回, 右肺S6に径8mm大の腫瘍を発症し, 画像上腺癌が強く疑われたため胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.ユニベントチューブと高頻度ジェット換気法を用いて上中葉を選択的に換気することにより, 下葉を完全に虚脱させた麻酔管理が可能となり, 手術操作に支障をきたさなかった.術後経過は良好で, 術後4週の呼吸機能は術前値付近まで回復し, 合併症は特に認められなかった.病理組織学的診断は中分化腺癌であった.胸腔鏡下肺部分切除は呼吸機能の喪失が他の術式と比較して軽微である.肺全摘術後の対側肺を部分切除する必要が生じた場合, 適応を選択すれば, 本法は有用と思われた.