抄録
乳児期に呼吸器感染にて発症し, 待機的に根治手術を施行した, 先天性嚢胞性腺腫様奇形の1例を報告する.症例は1歳女児, 生後6ヵ月時に発熱にて近医受診.胸部X線写真にて右下肺野に異常陰影を指摘され, 精査目的に当院小児科受診となった.胸部CT, MRIにて右下葉に嚢胞を有する腫瘤を認めた.大動脈造影では, 病変部への異常動脈の流入は認めなかった.以上より本症例を嚢胞性肺疾患と診断し, 1歳時に右下葉切除を施行した.切除標本では病変部に多発する小嚢胞を認めた.病理組織学的所見では軟骨組織が欠如し, 多列線毛上皮で覆われた嚢胞壁を認め, 先天性嚢胞性腺腫様奇形と診断された.本疾患の治療は, 残存病変からの再発の危険性があることから, 病変部を含む区域切除または葉切除が適切であると考えられた.